社保研レポート/技術進歩のすばらしさに感銘
第643回(1/28)最近の画像診断の進歩
講師:独立行政法人京都市立病院機構
京都市立病院放射線科部長 早川克己氏
1970年に卒業した小生は、単純レントゲン撮影がほとんど唯一の画像診断であった。時にX線断層撮影のぶれたような像も見ることもあった。コンピュータの発達によりX線CTが出現し、臓器の横断像が鮮明に映し出されたのに驚愕した記憶がある。しかし軟部組織病変の診断は難しく、かなりの勉強と習熟が要求された。CT出現後10年位してMRIが登場、骨軟部組織も見事に多方向撮影され、撮像条件と輝度変化で病変の質までが診断可能になった。MRIは磁気による撮影だが、その原理は難しい。しかし今までもっとも見えなかった脳などの中枢神経を、MRIは最もよく見える臓器にした。
CTは撮像台を動かしながら短時間に広範囲を撮影できるヘリカルCTから、これに多数の検出器をつけた Multi-Detector CT(MD−CT)に発展した。
このように最近の画像診断はMRI、MD−CTと著しく進んでいる。しかし進歩が早すぎて専門外の者は困惑する。
そんなわけで今回の企画はまことに時機を得たものと思われた。早川先生には京都市立病院で実際に行われている最新の画像診断の一端をお話しいただけた。
MRIの拡散テンソル画像
拡散テンソル画像では神経線維の走行が描出されるようになった。医学生時代に解剖学で神経線維の走行を記憶するのに苦労したが、それが人で描出される時代となった。京都市立病院ではこの拡散テンソル画像を運動障害児に用いて診断に利用されている。拡散テンソル画像は脳腫瘍手術に応用すれば重要な神経線維損傷を避け得るようだ。
3D-CTアンギオグラフィー(CTA)の技術
冠動脈造影や脳血管造影は64列MD−CTで静脈投与によるアンギオグラフィーが一般的となり、市立病院もされている。 動脈流の遅い透析シャントの狭窄例にCTアンギオグラフィーを用いて血流状態を入れた血管造影を示された。その造影像はアトラスを見るがごとく多方向からの血管と血液の流れを示された。この方法は透析シャント狭窄ばかりでなく、四肢の抹消血管の狭窄にも応用可能だろう。
救急疾患に対するCTの診断とIVR
急性腹症は時間外新患でこれまでの臨床データがまったくなく、しかも治療は寸刻を争う最悪のシナリオが多い。この急性腹症に造影剤を静注して腹部CTを撮影して遊離ガスの位置と腸管粘膜の染まりを診て穿孔部位(消化管の上部か下部か?)、腸管虚血を診て小腸閉塞症、上腸間膜動脈血栓塞栓症、造影剤流出?などCTを詳細に診ることにより的確な診断ができ、迅速に治療方針が決定できる。 これには相当の勉強を要するが、多数の症例を示してわかりやすく講演された。 聴衆一同、最近の画像診断のすばらしさに感銘した。(中京西部・岩破康博)
講演する早川克己氏