人体の不思議展/都地検、不起訴処分としたが 「今後は同じ方法で展示行えない」  PDF

人体の不思議展/都地検、不起訴処分としたが 「今後は同じ方法で展示行えない」

 協会が開催中止などを求めてきた「人体の不思議展」(2010年12月〜11年1月、左京区で開催)をめぐり、二つの動きがあった。

検察審査会へ申立

 一つは「京都ネットワーク」として取り組んだ刑事告発について2011年12月21日付で京都地検より不起訴処分通知が届いたこと。これに関し28日に担当検事と面会し、不起訴とした経緯を確認した。京都地検の判断は、プラストミック標本は、「現時点では」死体であり、展示についても死体解剖保存法の保存にあたるとしている。しかし、主催者側にその認識がなく、現在に至るまでどこからも指摘がないまま開催されていたこともあり、主催者側の故意ではないという主張を覆すことは難しいと判断。不起訴としたと説明を受けた。

 京都地検は、今回の件で主催者側も認識を改めたこととなり、今後は同じ方法での展示は行えない。許可なく展示を行えば、保存法違反にあたることを主催者側に伝えたとしている。

 京都ネットワークは、主催者側は開催のための宣伝で標本が本物であることを強調しており、展示会場で標本の製造過程を開示していたことから、標本が死体との認識がなかったとは考えにくいと判断。2月13日に、今回の処分を不服とし、京都検察審査会へ申立を行った。

民事訴訟も訴え棄却

 もう一つは、京都工芸繊維大学名誉教授の宗川吉汪氏が主催者に損害賠償を求めていた民事訴訟で、京都地裁が2月16日、訴えを棄却した。判決文は、原告の「標本とされた死体が自宅近くで展示されていることに、精神的苦痛を覚える」と主張した心情は理解できるとしつつも、原告が受けた苦痛は主観的である。被告の違法行為を判断するまでもなく、原告の保護すべき権利が見当たらないとした。

医の倫理を問う声

 判決言い渡し後、同展に対する取り組みの中間総括を兼ねた報告集会を開催。

 報告会では、宗川氏から、今回の判決は想定内としながら、判決文に「心情は理解できる」としつつも、プラストミック標本が死体であることすら判断しない裁判所の姿勢に疑問を持つとし、控訴する方向で考えたいと報告があった。

 弁護人である小笠原伸児氏も、違法性に踏み込まない今回の判決は不当判決であり、宗川氏には控訴を勧めたいとした。

 また、この間の取り組みに対する中間総括として、垣田副理事長、小笠原氏、末永恵子氏(福島県立医科大学講師)、宗川氏の4人が発言。

 垣田副理事長は、協会で取り組んだ厚労省担当課との懇談や、医学・医療に関わる倫理について考える講演会の開催状況などを紹介。死体の商業展示は故人の人権侵害であり、尊厳を踏みにじるものと認識。医療者であるからこそ倫理観に鈍感にならずに、京都の医療者の良識を示すべく取り組んできたことを報告した。

 小笠原氏は、「二度と人体の不思議展を開催させない」ことが運動の目的であることを再度強調し、違法性を追及するためにも控訴すべきと述べた。

 末永氏は、本来、医学実習などに携わっている医師から、同展問題に疑問視する声が上がるべきと考えているとし、宗川氏が明らかにした東大への寄付金問題など、医学界の倫理が問われていると報告した。

 宗川氏も、医学教育においてプラストミック標本が使用されているといわれていることなどを今後、どう考えるかが重要な問題となるとした。

 なお、協会会員にも呼びかけた同展を巡る民事訴訟の公正な判決を求める請願署名については個人1222筆、団体33団体から集まり、京都地裁に提出した。ご協力いただいた方々にお礼申し上げる。

「人体の不思議展」への取り組みの主な経緯

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