主張
患者とのトラブルを避けるために医療安全シンポへの参加を
京都協会は、医療安全の確保と保険医療制度の充実を求め活動・提言している。前者の一環として身近な紛争事例をあげ、医療安全の促進を目的に、来る3月10日(土)に2011年度医療安全シンポジウム「対応に苦慮する患者さんたち―応召義務について」(下掲)を開催する。
院内で対応に苦慮する問題の発生としては、患者等の期待や医師等の予期に反して生じた有害事象など悪しき結果や医療過程に関わる周辺問題に対して両者間で評価の齟齬などが生じると、受忍限度を超えて紛争化する。これらを発端に院外に拡大する医療過誤訴訟などの問題や、周辺的には悪質な苦情・クレームや院内暴力・未収金などの問題がある。しかし、医療は、基本的にはその制度的適用下で受診され、説明と理解・承諾上での意思表示の一致による契約関係で、実質的には、医師などの判断・行為として診察・検査・治療・収容・介助などが実施され、期待・予期に反する結果に、その原因や責任の帰属が争われる。病院・診療所では規模や特性が相違するが、ともに、遅診や転医義務違反、採血検査や注射など穿刺時の神経傷害、転倒骨折など卑近な問題とともに、証明書の発行や薬剤の処方などに際して、便宜的供与などが期待される場合には、法律上の権利・義務に関わる手続き問題が生じ、法令上に矛盾・抵触関係を生じる際には義務衝突によるジレンマが深刻な問題となる。
例えば、1. 傷病手当金支給証明書の発行依頼において医師が労働不能期間等を証明する意見陳述・記載が求められる場合は、診療事実に基づく事実証明が必要であるため、期待通りに応じきれない場合には証明内容を不満とする患者側からの頻回の苦情攻勢が生じる場合もある。法律上の問題として協会顧問弁護士に諮問し指導を得て対応することも必要となろう。更に、脅迫的な電話には、危険拡大の防止に所轄警察署に届け出ておくことも必要となろう。2. 外来日常診療において、初診時に対面診察の困難から、問診だけで応急的に前回と同様の処方をして投薬に便宜をはかるなどは、現在は再診時に許容されるが初診としては診察を要する。健康保険法に基づく指導・監査後に保険医の指定等の取消がなされ、行政訴訟を提起しその取消がなされた事例もある。(本紙第2796号)
日常臨床でのトラブルには、悪質な苦情・クレームや院内暴力・未収金の問題などのほか、患者の期待に医師が善良に答えようとして、期待に添い切れない診療および周辺問題過程があり、医師法・健康保険法はじめ法令の規定に抵触して義務衝突する場合もあり、法律上の権利・義務に関わる手続き問題を含み得るので、自院の「医療崩壊」を回避すべく適正な解決策を得るには、法律上の不利益を被らぬよう法律家の法技術的な助言・支援を必要とし、積極的な求めが必要となる。
医療の安全確保の参考に、また従業員研修の一環としても、協会シンポジウムへのご参加をお薦めしたい。