主張/税制全体の抜本的見直しと国民的議論を  PDF

主張/税制全体の抜本的見直しと国民的議論を

政府・与党は「社会保障・税一体改革」大綱素案をとりまとめた。

医療・介護従事者のマンパワー増強や中低所得者に対する高額療養費の負担軽減など評価できる面もあったが、その財源捻出のため重点化・効率化とされたものに多々問題点があった。その内、最大の問題であった外来受診時の定額負担と70〜74歳の窓口負担を1割から2割にする案は先送りすることになった。受診時の定額負担見送りにより、財源がなくなったとして高額療養費の負担軽減もほんの一部になりそうだが、他の財源、例えば保険料を少し上げても実現してほしかった。消費税については、2014年4月に8%、15年10月に10%と決めた。

12年度の政府予算案では、一般会計90・3兆円の歳出で、歳入は税収の42・3兆円に対して国債発行が44・2兆円と国債依存度が過去最高の49%となり、4年連続で国債発行額が税収を上回る事態となった。復興債も加わり、国債を中心に国の債務は12年度末には1千兆円を超える。所得税、法人税の減税に景気低迷が加わって、税収はピーク時の90年度に比べて20兆円位落ちている。

更に法人税(国税)は4・5%、(法人実効税率としては5%)引き下げが決まっており、復興財源として3年間は1割の付加税が課されるので、実質引き下げは2・5%だが4年目からは5%丸々引き下げになる。法人税は外国に比べて高いといわれているが、種々の優遇税制もあり、実際の負担率は高くないとするレポートもある。さらに大企業には内部留保が250兆円あるともいわれる。中小法人の税率引き下げはともかく、大企業の法人税率引き下げが本当に必要か議論の余地がある。所得税も課税所得5000万円超について最高税率を40%から45%に上げたが、2500万円超でもよかったのではないか。

民主党が当初、考えていた特別会計の見直しによる財源(埋蔵金)もあまり出てこなかったが、一般会計同様、特別会計も国民の前にわかりやすく説明してほしい。社会保険料も高所得者の上限引き上げが必要であろう。まず消費税増税ありきでなく、税制全体の在り方を、国民の前で与野党で議論してほしい。その上で、消費税が上がる場合は、医療機関にとっては控除対象外消費税問題を解決することが大前提である。財政の健全化も大切だが、社会保障を確立して将来不安を解消し、国民が安心して消費に向かうような施策を求めたい。

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