医療安全対策の常識と工夫51  PDF

医療安全対策の常識と工夫51

貴方ならどうします?がん告知の選択

 がんの診断の遅れについては既にお話ししましたが、やはり「何故、もっと早く告知してくれなかった!」というクレームがくる可能性は否定できません。もちろん、その逆に「告知なんてしてほしくなかったのに…」という患者さんもいると思われます。医師としてはその判断・選択に苦悩することも珍しくないかもしれません。

 告知の問題は医療界だけで完結できるものとは思えませんが、そういっても現場の問題は一向に前に進まないのもまた現実です。そこで先にお話しした、尋ねにくい妊娠についての項目等と合わせて、質問事項の一つとして、がんが発見された場合の希望する処遇について、患者さんにアンケートをとっては如何でしょうか。もちろん、このアンケートはその実施日が重要なポイントとなり、時間の経過と共にその質問の有効性は減少していくので、可能な限り定期的に施行しなければ意味がなくなります。また、アンケートをとっているのだから医事紛争は起こらない、起こっても大丈夫ということではありません。その点だけはご注意下さい。

 1998年6月に京都保険医新聞資料版で「告知・尊厳死・安楽死についての意識・実態調査」結果を報告していますが、このアンケートは実際に、ある医療機関が日常診療に活用するために、患者さんを対象に行ったものでした。このアンケートのそもそもの発想は、「直接患者さんに訊かなければ分からないし、診察の上でも必要なのだが、実際はどうも訊きにくい…」といった医師のジレンマから出てきたものだそうです。一度、参考に見ていただければ結構かと思います。

 次回は、示談に際しての心構えについてお話しします。

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