公的に医療・福祉を保障する地域包括ケア実現を
府・市に介護保険事業計画で要望
協会は10月31日、「公的に医療・福祉を保障する地域包括ケアシステムの実現を―第5期介護保険事業計画策定にあたっての要望」を、京都府及び府内全市町村に提出。11月29日に京都府と、30日に京都市と懇談の席を設定し、垣田副理事長らが直接要望を伝えるとともに、協会の要望についての当局の見解を聞き、意見交換した。(要望抄は下掲、全文はこちらに掲載)
京都府との懇談
京都府との懇談では、山口隆氏(健康福祉部高齢者支援課長)が対応。山口課長は、府は「京都式地域包括ケア」を打ち出し、約58億円の予算を確保して積極的に進めている。しかし、十分進んでいない実情もあり、懇談を持てたことは、今後の施策推進にとってありがたい、と述べた。
協会の要望に答える中で、国が実施を求めている「日常生活圏域ニーズ調査」(管内高齢者に対する全数調査)について、その重要性を強調。介護保険制度により高齢者のサービスが「契約」に委ねられたことで、市町村の住民実態把握が困難になったこともあり、今回提起された。そこで発見されたニーズに市町村が適切に対応する必要があると述べた。
また、地域包括ケアシステムの中心を担う「地域包括支援センター」への支援について、市町村がセンターの運営指針を立てることが法改正に盛り込まれたことから、指針策定を通じ、委託型の場合も市町村がセンターの仕事を自らの業務として進めていく方向になるだろうとの見解を明らかにした。さらに、施設サービスの重要性についてや、京都式地域包括ケアシステムにおいても、施設の意義は引き続き重要であり、整備を進めたいとの姿勢を示した。
京都市との懇談
京都市との懇談では、塩見徹也氏(長寿福祉課長)、大西利加子氏(長寿福祉課施設整備担当課長)、安藤重樹氏(長寿福祉課長寿施策担当課長)、橋健一氏(介護保険課長)、永博己氏(介護保険課担当課長)、吉田正和氏(長寿福祉課企画係長)が出席した。
京都市は、地域包括支援センターの体制強化に関し、9月議会において、補正予算に盛り込んだ「ITネットワークシステム」により、全地域包括支援センターと福祉事務所に「高齢者包括支援ネットワークシステム」を導入し、個々の高齢者の医療・介護・福祉の利用状況の情報を共有することで、支援・連携を強化する方向だと述べた。また、新設された定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスは、既存の居宅サービスに加えることで、地域包括ケアシステムが推進できるものとの考えを述べた。市が現時点では実施していない「日常生活圏域ニーズ調査」については、京都市の高齢者人口は33万人であり、地域課題の把握には国が示す全件把握以外の方法も検討する必要があるとした。
京都府との懇談
京都市との懇談
協会・地域包括ケア検討委員会要望書
第5期介護保険事業計画策定にあたっての要望(抄)
- 地方自治体が医療・福祉に公的責任を果たす立場で施策検討を
- 都道府県としての総合的な医療・福祉の公的な保障を前提にした事業計画を
- 地域包括支援センターの体制強化を公的責任で 日常生活圏域にコミュニティ・ソーシャルワーカーを公務員で配置を
- 地域包括支援センターの運営支援を 行政直営の「基幹型地域包括支援センター」設置を
- 情報弱者の制度利用について配慮の行き届いた援助を
- 地域の課題を把握し、必要十分なサービス確保を
- 日常生活圏域ニーズ調査の完全実施を
- 在宅生活を支えるための基本的なサービスの完全確保を 新設された定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービスは、介護保険給付の不備の 補完策。訪問介護・訪問看護ステーション・訪問リハビリテーション・通所介護・通所リハビリテーション等、在宅生活・療養を支える基礎的なサービスの確保と一体的に
- 地域密着型サービスの報酬設定は事業者にとって適切なレベルに
- 特別養護老人ホームをはじめとした必要な施設サービスの確保を
- 介護予防・日常生活総合支援事業は、従来サービスを補完するものとして計画を
- 日常生活圏域は住民の暮らしの実態に即して十分な検討を
- 国の改正により生じる新たな問題点へ対応を
- 地域区分見直しの事業者への影響緩和策を
- 施設基準等の条例制定は住民の意見を前提に
- サービス付き高齢者向け住宅制度の運営基準改善を
- 介護家族に対するケアの公的保障する制度の確立を
- 家族介護者支援施策の公的な位置付けを
- 家族介護者に対する社会的不利益の解消を
- 家族介護者の就労保障を