「人体の不思議展」民事訴訟 口頭弁論で違法性訴え  PDF

「人体の不思議展」民事訴訟 口頭弁論で違法性訴え

 協会は、「人体の不思議展」は遺体に対する尊厳を著しく蹂躙し、遺体を営利目的に使用するなど重大な倫理的問題があるとして、同展の開催中止の運動に取り組んできた。その中で、今年1月「人体の不思議展を考える京都ネットワーク」の呼びかけ人である京都工芸繊維大学名誉教授の宗川吉汪氏が同展実行委員会に対して損害賠償請求を提訴。協会はこの民事訴訟が同展の違法性を明らかにし、同展を二度と開催させないためにも重要な裁判であるとして支援してきた。

 その第1回口頭弁論が9月21日、京都地方裁判所で行われ、台風のさなか24人が傍聴。協会から垣田副理事長ら4人が参加した。同展の問題を訴え続けてきた福島県立医科大学講師の末永恵子氏も駆け付けた。

 裁判は実行委員会側が出席しない中で行われたが、宗川氏の弁護人である小笠原弁護士が裁判官に対して証拠品(人体の不思議展のパンフレット等)の提示を行い、「人体の不思議展の実行委員会」を被告として訴訟を行うに至った経緯を説明。同展は医学倫理的にも大きな問題があるが、医学界で解決できる問題だけではない。展示されている標本は本物の遺体であり、それを専ら営利目的で展示することの違法性を司法の場で明確にすることが重要と述べた。続いて宗川氏が意見陳述。興味本位としか思えない解剖標本やポーズをとらされた標本が、顔のわかる状態で、少なからず展示されており遺体のプライバシーの侵害であること、死体の商業展示は死者に対する冒涜で、死者の尊厳を貶める行為は、文化地域である京都岡崎にふさわしくないこと、この地に住まう者として、人間性を無視した人体の不思議展によって私の心はすっかり乱され、平穏に生活する権利が著しく侵害されたことによる精神的苦痛に対して損害賠償請求を訴えた。

 裁判終了後、京都弁護士会館において報告会を開き、小笠原弁護士から裁判の目的と争点などが説明されるとともに、宗川氏からは訴訟に対する思いが語られた。参加者からは意見や励ましの言葉が話され、「医の倫理」や「戦争と医学」にもつながる問題があること、科学者の社会的責任を考える必要があることなどが報告された。なお、第2回目の裁判は争点整理となるため非公開となる。

報告会での宗川氏(左)と小笠原弁護士
報告会での宗川氏(左)と小笠原弁護士

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