医界寸評  PDF

医界寸評

 新首相に野田佳彦氏が選ばれた。子ども手当て、高速道路無料化、個別補償制度、高校無料化などの部分見直しの3党合意がなされたものの党内ではいまなお親小沢、反小沢派の思惑が渦巻いている。しかしもっと重要なマニフェスト違反がある

▼2年前、政権交代の原動力になった総選挙マニフェストは、「社会保障の抜本改革」「消費税率の維持」だったはずである。だが「一体改革」での社会保障改革は現行制度の延長線に過ぎず、消費税率引き上げも明記された。マニフェストは大ウソであった。現在のデフレ下での消費税増税は、景気低迷をいっそう深刻化させる猛毒なのである。引き上げ幅5%のうち全部が社会保障の機能強化に使われるのではなく、たかだか1%、2・7兆円に過ぎない

▼今年は国民皆保険50周年に当たるが、医療費負担を懸念して受診抑制、診療手控えが起こっている。初再診時の毎回、通行税のような定額負担の案が出されたが、給付割合は7割を維持するとした健保法付則を反故にすることは許してならない

▼後期高齢者医療制度廃止後の制度設計として、市町村国保の都道府県化が示されている。都道府県同士、医療費抑制を競わせるこのシステムで、地域により医療内容に差がつくことになる。日本の窓口負担は先進国中、もっとも重いものであり、診療報酬増額の要求に先んじて、患者負担軽減の運動が必要である。(木鼠)

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