新年度にあたって 政策部会
政治は深刻な生活課題に応えられているか 「社会保障基本法」制定を訴える
副理事長 垣田さち子
2009年度のご挨拶で「来月には4年ぶりの衆議院選挙が行われる。…人々は、思いを込めて一票を投じ国政に参加するだろう」と書いた。その選挙の結果、戦後50年以上の長い間この国の政治を担ってきた自民党政権が終わり、新しく民主党政権が誕生した。
選挙にあたって民主党が掲げたマニフェストには社会保障制度の充実が明記され、医療の分野も、特に国民の怒りが集中していた後期高齢者医療制度の廃止がはっきり打ち出されるなど、私たちの主張と一致するものがあり、大いに新政権に期待した。
しかし、2年が経過し、民主党政治の混迷は誰の目にも明らかで、政権交代後の混乱はある程度予測されていたとはいえ、あまりにも稚拙な展開に怒りを通り越して不安感が増していた。そこへ、予測外の東日本大震災と福島原発事故である。日本は今、大きな曲がり角を迎えていると実感する。
復興に向けての施策が次々に打ち出されるべきときに、政府の動きは鈍い。復旧という言葉では決して解決しないこの地域に集約された構造的な問題が一挙に露わになっているのだ。
医療の問題をみても、震災以前から、医師不足を原因とする医療提供体制の不備が指摘され、前提としてこの地域全体の過疎化、高齢化の進行が問題になっていた。自民党政権が推し進めてきた構造改革路線の到達点を示す地域でもある。
7月末になってようやく復興基本方針が発表され予算額も示されたが、具体策は少なく、これで地域再生に向かって被災地の人々が力強く前を向いて踏み出していけるのか疑問である。
一方で昨年から議論されてきた「社会保障と税の一体改革」案も決定された。2025年までの工程表がついた総合的、具体的な成案で「災害復旧にとどまらず、活力ある日本の再生を視野に入れ…復興対策との両立を図りつつ、未来志向の見地から被災地を少子高齢化が進む日本の先進的モデルとする」と冒頭に述べられている。
来年は、「医療保険」「介護保険」制度同時改定の年でもある。「地域包括ケア」をキーワードに自助・互助が強調されるが、地域の抱える深刻な生活課題にどう応えられるのか。
さまざまに提起されている改革案が、相互に関連しながら一つの方向に向かおうとしているとき、医師の立場からその行く末を見定めて責任を持って議論に参加しなければならない。
最近私は、あらためて日本国憲法の有り難さを自覚します。国民の幸せのために、この憲法がより実効ある強い力を発揮できるように「社会保障基本法」制定をめざして、もう一期頑張りたいと思います。どうかよろしくご指導お願い申し上げます。