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レポート 12年「同時改定」はあるのか、ないのか

 2012年度は診療報酬・介護報酬の同時改定が予定されている年である。しかし東日本大震災を受けて、その実施の是非が問われている。これまでの流れと、実施の見込みについてレポートする。

【延期を求める声】

 京都府保険医協会は4月12日、同時改定凍結(延期)を求める理事会アピールを採択した。改定延期を医療団体が表明した初のケースであった。日医は4月24日、代議員会において同時改定見送りの決議が執行部より提案されたが合意には至らなかった。日医は改めて執行部で方針を確認し5月19日、細川厚労大臣に同時改定「見送り」を申し入れる。しかし日医代議員会で決議できなかったことは、医療界において同時改定実施か否かの意見が交錯していることを如実に表した。

【足並みが揃わない】

 病院団体も足並みが揃わない。日本病院会は5月9日、延期反対を表明。日本精神科病院協会は延期を主張した(5月13日)が、全国自治体病院協議会(5月25日)、全国公私病院連盟(6月17日)と次々改定実施の考えを明らかにした。

 一方、支払側の態度は、健保連の白川氏(中医協委員)が4月21日、いち早く延期する議論には乗れない、と反対を表明した。

【保団連でも】

 足並みが揃わないのは、保団連も同じだ。12年診療報酬・介護報酬に向けた要求をまとめるにあたって、診療報酬改善対策委員会から延期要求を盛り込むことが提案された。しかし、協会討議に付したところ、延期要求しないとの回答が27協会と、延期要求すべきとした12協会を上回り、結果として要求には盛り込まないこととなった。

【政府の方針】

 一方、細川厚労大臣は5月13日の時点で、医師会からの申し出があれば改定延期も検討すべきとの考えを示している。しかし、日医が「先送り」を申し入れたにもかかわらず、6月9日には、粛々と改定の方向で進めると表明。この間、厚労大臣にどのような変化があったのかは不明であるが、一気に改定実施の方向に舵がとられたかに思われた。

【実調の誤送付】

 中医協では、改定「先送り」を主張する日医が抵抗し、被災地への配慮をするという条件でようやく医療経済実態調査が実施された。そこであってはならないミスが発生する。6月9日に判明した、流失医療機関への調査票の誤送付である。これに対し中医協で日医は猛烈に反発。森田中医協会長にまで「あってはならないこと」と言わしめた。

【被災地の考え】

 被災地では、宮城県医師会が7月7日、細川厚労大臣に対し、同時改定を1年延期するよう求めた。さらに、宮城県保険医協会の会員対象アンケート調査では、回答者の過半数が「延期すべき」と回答していたことが明らかとなった。

【同時改定に向っているが】

 このような中、細川厚労大臣は7月12日、参院厚生労働委員会で、改めて同時改定を行いたいと表明した。流れは同時改定実施の方向で進んでいる。要求運動など、今後の活動は、実施の方向で動かざるを得ないだろう。しかし、同時改定実施は、被災地の考え方と乖離している可能性がある。宮城県以外で調査が行われていないので結論付けは困難だが、地域医療そのものが崩壊している被災地で、「改定」が当てはまりにくいのかもしれない。「改定」は医療機関等が常態として存在する前提で初めて実施できるからである。

【被災地へ最大限配慮を】

 薬価、治療材料改定のみを実施し、それによりできた財源を、現段階では補助金助成の対象となっていない民間医療機関再建のための補助金として活用するなど、被災地・被災医療機関に最大限の配慮が必要である。同時改定が実施されるにしても、被災地が取り残されない内容にすべきことは言うまでもない。

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