新規開業予定者のための講習会開く  PDF

新規開業予定者のための講習会開く

開業を考える医師に実践的アドバイス

 新規開業を考えておられる勤務医を対象に、協会は5月28日に新規開業予定者のための講習会を開催した。共催は有限会社アミス。講習会は、(1)初めが肝心! スタッフ雇用の留意点、(2)先輩開業医からのアドバイス―の2題で講演。最後に北村理事から、地区医師会入会の留意点、協会共済制度の紹介や活用方法を説明した。講習会の概要は以下の通り。

経営方針に沿った雇用と法律遵守の管理を

 1講目は、(株)ひろせ総研経営コンサルタント・特定社会保険労務士の河原義徳氏は、開業する上での重要事項の一つ「スタッフの雇用と管理」について、(1)開業時の採用活動、(2)特に知っておくべき雇用管理の基礎知識―の2点を中心に解説した。

 スタッフの採用にあたってまず大切なのは、「どんなクリニックにしたいか(経営方針・理念)」を明確にした上で、その方針に沿った人選を行うこと。スタッフの役割で最優先事項は何か、を考えておく。面接時に、身だしなみなどの注意を要するが法律上規制しづらい事項を伝えておくことも必要。雇用者には労働条件通知書を作成し、労働条件を明確にすることで、労使双方の共通認識が生まれる。労使トラブルの原因となる見解の相違、考え方の違いは、共通認識があれば回避できる。労働条件通知書の雛型は『医院経営と雇用管理』(全国保険医団体連合会発行)が参考となる。

 雇用管理の基礎知識として、以下の項目に重点を置いた。試用期間の考え方について、試用期間中といえども自由な解雇はできない。本採用に不安が残る場合、試用期間を延長し、雇用者の問題点を指摘した上で、改善を求め、機会を与えることが大切。採用とは、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に立脚した行為であり、生活の糧(給与)を奪う解雇は簡単に許されないことを念頭に入れておく。

 有給休暇は法律上、常勤・非常勤の別なく付与することが定められており、給与と調整の上で付与する方法もある。

 このように労使関係でも法律を遵守することで、安心してスタッフが働ける。さらに安心・安全な医療を患者さんに提供できる環境を作ることができる。

新規開業予定者に講習
新規開業予定者に講習

開業理念もとに“みんなでクリニックを作る”金光宣旭氏より先輩アドバイス

金光宣旭 氏
金光宣旭 氏

 2講目は、かねみつ内科クリニック院長の金光宣旭氏より、開業時の経験、スタッフとの関係づくり、医院経営の工夫―など、これから開業を目指す勤務医の方にアドバイスした。

 開業には「強い想い」を基盤に、その上に理念→戦略→戦術が必要。強い想いは「みんなの笑顔がみたい」ということ。「笑顔のあふれるまちづくりの実現をめざす」という自院の理念をスタッフと共有化することが大切。戦略は、笑顔をたやさない、向上心をもつ、スタッフを大事にする―など。戦術には、P(Plan:計画)D(Do:行動)C(Check:チェック)、A(Action:活動)が重要。

 医療機関の広告は、看板(駅・野立て)、電車内広告、ホームページ、電話帳、区役所内モニターなどを活用したが、患者さんの来院アンケートによるとホームページが効果的で、看板は開院当初は効果的だが、時間経過とともに効果が薄れる。広告・看板を出す時には十分に考え、即決しない。今後は患者数の少ない地域を調査し、重点的に広告するなどを検討している。

 院内では内視鏡アンケート、患者満足度調査を実施し、サービス提供に役立てている。内視鏡アンケートでは鼻の麻酔が痛いという意見も多く、経鼻にこだわる必要がないことも分かった。今後は職員満足度調査を予定。

 スタッフは開業当初、看護師、事務員すべて非常勤としていたが、スタッフのモチベーションなどを考慮し、現在は常勤者を3人にしている。スタッフ管理は大変難しいと実感。就業規則や賃金規定の作成をはじめ、情報共有化のために毎朝のミーティングや会議の開催、スタッフ全員でのマニュアル作成、失敗を責めずシステム改善を検討、定期的な個別面談などを行っているが、やはり重要なのは、理念を共有化し、そぐわないことはしない、に尽きる。

 失敗した時には、インシデント・アクシデントレポートを作成し、再発予防に努めている。保険医協会主催の医療安全講習会やマナー講習会などに参加したり、各種勉強会を院内で開くなど、院長自ら率先して行っている。講習会などはレポートを作成、PDCAを行い院内にフィードバックさせている。これらは病院で行うことと同じで、“みんなでクリニックを作る”という雰囲気づくりが重要。これらを実践することで、開業当初に比べてスタッフの意識の変化を実感している。

 勤務医の方が精神的には楽な面もあるが、もがきながら前に進むしかない。悩んだ時や判断に迷った時は、細かいことにこだわらず、理念に戻るようにしている。

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