医療安全対策の常識と工夫(35)  PDF

医療安全対策の常識と工夫(35)

安全対策の心得が解決時間の短縮に繋がります!

 前回は、京都府保険医協会のデータによると、紛争解決までに示談ならば半年から1年、調停ならば2年、訴訟ならば4年が一応の目処となることをお話ししました。これらの期間だけを見ると、訴訟よりは調停、調停よりは示談で解決するのが好ましいということになります。もちろん、ケースによっては、無理して示談するよりも訴訟の方が、よりよい解決が見込まれることもありますが、ここでは果たして調停や訴訟を回避できるものか考えてみたいと思います。

 患者さん側の訴訟・調停申立を絶対的に阻止することは法的にも不可能なことですが、協会に報告される調停・訴訟に至るまでの経過を見ていると、申し立ての理由が明確でない場面に出くわすことがあります。それは患者さん側の無知・無理解に起因することもありますが、それ以上に怒り任せで、今後の方針も十分に立てないままでのこともあります。加えて情報不足や助言の偏りも影響していると思われます。事実を確かめた訳ではありませんが、患者さんの言い分によると、相談に行った弁護士が「これは医療過誤だ。訴訟すれば何千万円かにはなる(可能性が高い)」と、詳細に調べる前から発言することもあるそうです。弁護士が事前に調べずに、このようなことを言うのは言語道断ですが、患者さんの友人・知人にしても患者さんを焚き付けることはあっても、確かな情報・助言を与えて冷静にさせることは稀なようです。

 患者さんがクレームや質問を言ってきた時には、医療機関として医学的に説明することに努めて下さい。それこそが患者さんに最も必要な情報です。そして、その説明を客観化させるために、是非、セカンド・オピニオンを求めて下さい。患者さんが誤解をしているとしたら、それを解くことで、調停や訴訟といった事態を回避する可能性が出てくるのです。これは即ち、医療安全対策ともなります。患者さんの誤解を解くことが、訴訟等を回避するだけでなく、紛争そのものを回避することになるのです。

 注:調停になるもので2年、訴訟で4年としていますが、これは調停期間が2年、訴訟期間が4年ということではなく、紛争発生(調停や訴訟となる以前)から調停・訴訟の終了期間までを示します。

 次回も、訴訟に関連したお話をします。

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