理事提言/真の「地域包括ケア」に向けて
現場の声を反映させた”京都式”に
政策部会 尾崎 望
地域包括ケアへの関心が高まっている。現在進行中の協会と地区医師会との懇談では、いずれの地区でも話題にのぼり、協会が主催した昨年12月の地域包括ケアをテーマとしたシンポジウムは定員をはるかに超えて、市民・関係者のあいだでの関心の高さを示した。
少し整理してみたい。経過を振り返ってみると、昨年11月30日に厚労省(社会保障審議会介護保険部会)が「介護保険制度の見直しに関する意見」を発表した。その中で見直しの基本的な考え方を(1)「地域包括ケア」の実現、(2)持続可能な介護保険制度の構築―としたことで、この「地域包括ケア」がいわば“公民権”を得た。ではこの「ケア」とは何か? 政府文書によれば「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本に、生活上の安全、安心、健康を確保するために、医療や介護、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活圏域で適切に提供できるような地域での体制」「個々人の心身状態にふさわしいサービスが切れ目なく提供できる体制」とされている。
これをどう評価するのかである。もちろん24時間にわたるサービスが提供され、しかも住宅が前提とされる以上、この提起がきわめて積極的なものであることは間違いない。しかし現状の介護を巡る困難、具体的には、厳しい労働条件、人手不足による現場の疲弊、事業所の経営難などの解決となるのか、またそもそも高齢者の要求にかなったものなのかという点できわめて多くの疑問が残る。今後国会での論戦を待つことになるが、具体的には2012年度からスタートする第五次介護保険事業計画に、この「ケア」の内容が盛り込まれていくことになる。したがって文字通り地域が論戦の舞台となる。
さて、京都府の2011年度当初予算が発表された。その中で地域包括ケアに関連する58億円にも上る予算が計上されている。事業名は、京都式地域包括ケア推進費である。何が京都式なのか? 少なくとも厚労省の文書にあるような「自助」「共助」などという自己責任丸出しの表現は一切見られない。反対に国の文書には言及のない地域包括ケア支援病院の登録などの予算が計上されている。今後、京都の医療・介護・福祉の連携をどのように発展させていくのか、この「京都式」を軸に論議が進められることは間違いないと思われる。協会として、高齢者自身、そして現場の医療者・介護従事者の意見をしっかり反映させて、具体的な提案を行っていくことを決めている。会員各位の積極的な意見を求める次第である。