決して軽んじてはいけない! 労働基準監督署の調査とその対応 理事会で学習
医療保険業は、労働基準監督署の定期監督を受けると、労働基準法違反等で是正勧告を受ける件数が8割を超えているため、桂好志郎社会保険労務士を講師に、定期監督の最近の傾向と注意すべき点を2月22日開催の定例理事会で学習した。
労働基準監督官には、行政監督権限と司法警察権限が付与されている。そのため、是正勧告に従わなかった場合や悪質なケースでは送検され、懲役・罰金刑に処されることがあるので、労働基準監督署の監督を軽く見てはいけない。
医療機関が受ける是正勧告の事例は、(1)常時使用する労働者に1年に1回定期健診を行っていない、(2)賃金台帳に労働時間等の法定事項を全て記入していない、(3)法定の除外事由がないのに労働者に時間外労働をさせている、(4)時間外労働時間数に応じた時間外労働手当額を下回っている、(5)労働者を雇用するに際し、雇用通知書を交付していない―などである。
割増賃金については、支払っていても単価を間違えている医療機関が少なからずある。計算根拠を基本給だけにしているとか、労働時間数を週48時間のままにしているところがあるので注意したい。
サービス残業認定では、労働者の能力が低いために残業になったものは残業手当を支払わなくても良いとする論理は通用しない。
最近は、(1)ホームページで労働者から申告を受け付けて監督に入る、(2)アンケート形式で自主点検をさせる方法や呼び出し監督を実施―などの方法をとっている。
自主点検表は誠実に回答しないと、悪質な事業者と判断されるので要注意。
現在は過労死などの問題から長時間残業に対する指導は厳しい。労働時間は1分単位で計算すべきだが、30分未満切り捨てや15分未満切り捨ては、労基法違反で是正対象となる。残業代を追加で支払えば確定申告の修正にもなるので、あとで面倒なことになる。
社会保険の適用も適切にしないと、職員の退職後にトラブルになるケースがあるので気をつけてほしい。
労働条件通知書の交付は後々のトラブル防止になるので、必ず出すこと。既に雇用している労働者に出していない場合は、昇給時期など節目の時に出すと良い、とアドバイスした。
その他、質疑応答では、採用時の面接で留意すること、解雇の問題、試用期間の取扱いなどについて活発な意見交換が行われた。
最後に、労務管理とは職員の能力を最大限に引き出す職場環境をつくり、スタッフと力を合わせる環境づくりのためのものである、とした。