医療安全対策の常識と工夫(33)  PDF

医療安全対策の常識と工夫(33)

どちらが被害者?

 前回に述べた被害者意識に陥った医師は、何故、自分が被害を被っていると感じたのでしょう。

 被害者意識を持った多くの医師も、一応は患者さん側に事態の説明を試みているようです。その結果、素人の患者さんから医師としての技量を否定されたり、人格についてまで非難されることもあるようです。また、脅迫・恐喝まがいのことを言われることもあります。結果が予想外に悪かったためでしょう、医師は反論を控え、黙り込んでしまうことがほとんどで、心の中だけで「そこまで言われる必要があるのか?」と反感が芽生えはじめているのではないでしょうか?

 この瞬間から医師は、患者さんを患者として捉えられなくなり、その存在が自分にとって実に厄介で時には脅威となるのです。このような状態に陥ってしまうと、患者さんやその家族を避けよう、避けようと(無意識にも)振る舞ってしまうこともあるでしょう。しかし、そのように振る舞っても事態は一向に解決へは向かいません。即ち、医師がどれだけ被害者意識を持ったとしても、何の解決にもならないばかりか、患者さんは当然ながら、他者への心証にしても良いことは一つもないのです。もちろん、これは「意識」の問題で、「被害者意識を持たないで」と言ったところで、そう簡単なこととは思われません。ただし、被害者意識を持つことで、少しでも自分の精神や立場を安定させようとする、いわば「無意識」には要注意です。まずは被害者意識を持たないように心掛け、被害者意識はメリットどころかデメリットの方が多いと「認識」するところから始められては如何でしょうか? そうすれば、解決に向かって何か良策が閃かないとも限りません。

 次回は、一般的に言って紛争がどれくらいの時間で解決に至るかをお話します。

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