第180回定時代議員会 決議
「構造改革」により本格化した新自由主義的な国づくりは、「地域主権改革」という国から地方へのまる投げ政策によって、新たな段階に至ろうとしている。本来国の責任によって整備されるべき社会保障のナショナルミニマムが、必要財源の一括交付金化と権限移譲によって、自治体財政に左右され、後退する危険性が生まれている。
医療においては市町村国保の危機を救い、後期高齢者医療制度の問題点を解決してほしいという国民の要求が逆手にとられ、医療保険制度を地方の責任による制度にしようという動きが加速している。
行き過ぎた「構造改革」に反対し、その見直し路線を打ち出したことで国民の支持を得た現政権は今、新しい国づくりを打ち出しつつも構造改革路線を前進させる方向以外、展望を見出していないかに見える。
しかし、今国民が求めているのは、そのような政治ではない。求められているのは、構造改革政治が国民生活にもたらした困難とひずみに目を向け、そこからの離脱をめざす政治である。そのためには、医療や福祉を中心とする社会保障制度の充実によって経済の成長基盤を支え、一人ひとりの自由と幸福を実現していくことを目標に掲げる、先進国日本にふさわしい「新しい福祉国家」の構想が必要である。私たちは、今こそ政府がその方向に向けて舵をきるべき時であることを訴え、下記につき決議する。
記
一、社会保障憲章を整備し、社会保障基本法を制定すること
一、社会保障後退につながる「地域主権改革」を進めないこと
一、国保は、都道府県単位化ではなく、国の制度として一本化すること
一、資格証明書・短期保険証発行制度を廃止すること
一、後期高齢者医療費に事実上のキャップ制を導入することになった財政負担割合の法定化を廃止し、同様の仕組みを国保に導入・拡大しないこと
一、公的医療保険への国家財政の投入を拡大すること
一、医師の労働条件を改善し、地域医療確保に努めること
一、医学的根拠に基づいたレセプト審査が行われる体制を保障すること
一、保険医と保険医療機関に対する指導・監査は、その権利保障と公正な手続きに基づいて実施し、現在行われている犯罪被疑者に対するかのごときものについては、即時中止、見直しを行うこと
一、医療に関わる消費税は、ゼロ税率を適用すること
一、生命保護を使命とする医療者の願いを実現するために、核兵器廃絶や地球環境悪化の問題などへの解決策を、他に率先して提起し推進すること
2011年1月27日
京都府保険医協会