医界寸評  PDF

医界寸評

 今年は卯年。兎と言えば満月を思い浮かべ、日本人なら誰でも好きな童謡「故郷」(兎追いしあの山〜)のメロディが頭に浮かぶ。大切にしたい「郷愁」。しかしすでに半世紀前に、月にはかぐや姫とは似ても似つかない宇宙服のアメリカ人が立ち、故郷のあの山はほとんど人間が占拠して姿を消した

▼レントゲンくらいしか医療器具のない時代、ある外科医は「この器具は例えば船か、飛行機かは分かるが、船の種類、軍艦か客船かまではわかりにくい」と説明されたとか。それから半世紀近くたった今は、船室の中の引き出しの中まで解ってしまう。「知らぬが仏」と言う諺がある。進化が激しい科学に精神面が追い付いているのだろうか。いくら医学が進歩しても、生があれば必ず死がある。年を経てくると時々「死に方」が話題になる。延命は厭だとか……

▼アメリカでは、医療保険制度に反対する声が多いと聞く。医療は自己責任であって税金を使われては困るという考えだそうだが、その考えに変に納得した自分に驚いた。多額の税金が投入されている日本の医療保険。しかしうまく使われているとは言い難い。問題は山積み。新しい内閣になれば、いつも今度こそと期待をしてきた。だが今度もかなり怪しくなってきた。国民(医療人)と政治家が、「知らぬはほっとけ」という無責任ではやりきれない。(名)

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