主張/窓口負担1割を原則とする65歳以上の新高齢者医療制度を
高齢者医療制度改革法案の提出が先送りになる可能性が大きくなってきた。市町村国保を都道府県単位で運営することに京都、大阪など賛成の府県もあるが、財源問題から反対の方が多い。費用負担増が見込まれる健保連も公費拡大を訴えて反対である。それよりも民主党が、4月の統一地方選を控えて法案提出にしり込みをしている。民主党の高齢者医療制度改革ワーキングチームも、70〜74歳の窓口負担を1割から2割にすることや、自公政権での75歳以上の低所得者に対する保険料軽減措置の縮小に反対している。日医も70〜74歳の窓口負担増については、「受診抑制につながりかねない」と拙速な現制度廃止は必要ないとしている。現行の後期高齢者医療制度を作った自民、公明は冷ややかに見ている。
ただ先送りして、このままずるずると現行制度をつづけるのは問題である。新高齢者医療制度では次の点を原則としたい。(1)今回の制度改革案では、独立した後期高齢者医療制度に入れられていた後期高齢者が、被用者保険本人と被扶養者は被用者保険に、それ以外は市町村国保に戻ってきて、高齢者は家族と同じ保険に加入し、保険証を変えなくてよくなり、「年齢差別」として国民に不評を買った点は解消された。この点は堅持する。(2)70〜74歳の1割負担は堅持する。(3)高齢者を74歳までと75歳以上に分けるのは分かりにくく、65〜74歳の前期高齢者医療制度に、75歳以上を吸収した65歳以上の高齢者医療制度とする。段階的に65〜69歳の窓口負担を1割とする。公費負担も5割とし、さらには6割程度に引き上げる。(4)国保の運営は市町村単位で行い、財源管理は国が行う。
(1)は今回の改革案の基本であり、(2)は現状維持である。(3)は公費負担が増えるので段階を踏む必要があるかもしれないが、実現不可能ではない。医療費の財源は、窓口負担、保険料、公費しかなく、高齢者には公費負担を中心に考えざるを得ない。公費、即ち税である。所得税、法人税、消費税、どれをとっても上がることを良しとする人はいない。税や保険料を納めても、自分の生活に戻ってくる実感が少ないために、国民負担増は理解を得にくい。しかし、高齢になり年金生活になった時、低額の窓口負担で安心して医療が受けられることを保障し、そのためには能力に応じた税負担が必要であることを、理解してもらわねばならない。これは個人にしても、企業にしても同様である。