最終回 自由詩コーナー/谷口 謙 選  PDF

最終回 自由詩コーナー/谷口 謙 選

秋の小川

門林岩雄

およいでいるのか
ながれているのか
ちいさなものが
水の上

十二年九月二十日

塔を建てよう
高い塔を
目印になる
輝く塔を

新・我流生物学入門2 カタツムリ

つまらないわと虫が鳴く
そう言われてもとカタツムリ

加藤善郎

そこに人々が集っていた
山の手の異人の館
ステンドグラスの向方には
大きな芭蕉のゆらぐ影
しきりに移り変わる人の影
やがて一斉に開かれた窓
皆が見つめ出したのは港
溢れんばかりの海軍聯合艦隊
点き出したのは煌々たる灯り
戦艦だ!!「陸奥」もおる「長門」もおる
あれからなんと八十年
あの艦隊もあの人々の殆んども
もうこの世では会えないのだ
でも 幻影がときに私を慰める
くろがねの艦隊 そしてあの港

微小貝の冬

m.

降りしきる雪
空も海も灰色に
そう
これが本当の海の姿
ここに生きるのは
私たち
厳しさの中で
荒波に打たれ
面々と命を繋いでいく
波音とともに

 古い記憶は消えている。『谷口謙詩集』の巻末の年譜を写す。平成2年11月13日、大宮町と野田川町(現与謝野町)の境にある平治地蔵尊を中心にして公園化され、私の詩碑が立てられた。「浮標」誌70号掲載「佳日」の前半部。当時の保険医協会の役員の方々が来訪され、その後の北小路博央先生のご発言により、平成3年9月9日より「京都保険医新聞」に自由詩コーナーが設けられ、その選者となった。爾来20年、いささか感無量である。投稿者、その他の方々、本当に有難うございました。

文芸欄終了にあたっての御礼

 長年にわたり選者を務めていただいた方々、休むことなく投稿を続けて下さった方々、心より感謝申し上げます。

京都府保険医協会「京都保険医新聞」編集部

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