最終回 読者のひっち俳句/隆英 選
入選
母校に見る運動会や陽の沈む
善郎
佳作
湖を背に御輿ひとつの秋祭
善郎
何事もなき幸せや栗赤飯(くりおこわ)
絢子
西山のなだらかにあり柿畑
絢子
潮をどる鳴門のうみや秋たかし
素
さようならひっち俳句やとり渡る
素
立冬や黄の蝶とんで父母なつかし
青磁
初冬や自ら祝ふ古稀前夜
青磁
冬晴の波おだやかに鳴く鴎
珠子
石庭は日差しに翳る冬紅葉
珠子
(順不同、仮名づかい新旧自由)
短 評
善郎さん、「陽の沈む」によって母校に対する懐かしさがでています。
絢子さん、誕生日か何かのくぎりの日に炊かれたおこわでしょうか。愛別離苦。親子でなくても別れは身に沁みます。
素さん、「ひっち俳句」もいよいよ今回で最後となりました。はじめは辻喜夫先生、谷口謙先生、中井脩太郎先生との短歌、詩、俳句の三本立てでしたが、早くに辻先生が、そして中井先生も亡くなられ淋しくなってきました。本欄は実に二十年前から始まっていて、長年にわたり応募して下さいました会員の皆さまに厚く御礼申し上げます。
青磁さん、いまどき「古稀」は珍しくありません。しかし、その七十年をつらつら振り返ってみると、いろいろのことがあったのによく生きてきたものだというのが実感で、まずは350の缶ビールでもぐいと開けましょうか。
皆様にはいつまでも健やかに過ごされますよう、お祈りして、私のお別れのご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
選者吟
幸あれと句の友いのる雁の空 隆英