医界寸評
大阪地検特捜部の主任検事による証拠改ざん事件は、その当時の上司の前特捜部長らが逮捕される事態となり検察不信が一気に広がっている。この事件は、結果的に無罪となった厚生労働省元局長に対する強引な捜査の中で行われた
▼その厚生労働省の職員による「政策コンテスト」で、現職の医療指導管理官の「指導監査に犯罪捜査のプロの活用を」との「保険医療指導監査部門の充実強化」案が一次選考を通過した。その内容は「悪を正し刑罰(行政上の措置)を課す点においては共通点があることから犯罪(詐欺罪)に対するプロである警察庁や警視庁(捜査第二課=知能犯、詐欺、横領担当)からの出向者受け入れ」を厚労省が行うというもの。指導と犯罪捜査を同じように考えている職員がいることも驚きだが、この案が一次選考を通る厚労省にもあきれてしまう
▼一方、帝京大学医学部付属病院でのアシネトバクターによる多剤耐性菌感染症の集団院内感染発生に関して、警視庁が病院関係者に任意の事情聴取を始めたとの報道があり、日本医師会、全国医師連盟が捜査当局の動きに抗議の声明を出している。日本病院団体協議会の邊見議長は、「多剤耐性菌の院内感染をもって大学病院に警察が入ることは問題だ」との認識を示したが、04年の福島県大野病院事件の反省が全く生かされていない
▼保険診療の指導や、医療安全の指導と犯罪捜査を混同してはならない。(彦)