医界寸評
新しい言葉ができると周辺に広がっていく。昔は都で登場した言葉が人や物の流れにのって徐々に地方に広がっていった。だから古の京都で使われた言葉が日本列島の端に残っていたりする。現在は、放送などで伝えられ瞬く間に広がるはずだが…
▼厚生労働省で“痴呆”という言葉は良くないと“認知症”という言葉を作ってから早6年になる。医療介護の現場では行き渡り、よく使う言葉は短縮される運命にあるのか「にんちしょう」と言わず「にんち」と略しているのをしばしば耳にするようになった。認知症=認知障害で認知症≠認知であるにも関わらず、認知という言葉の本来の意味から離れて「にんち」が増殖している。そのうち、辞書にも認知=認知症の略となってしまうのであろうか。となると、本来の認知は何処へいくのだろう
▼一方、厚生労働省の関係の文書なのに、老人ホーム入所のための老人健康診査表[第5号様式(第6条関係)]には“痴ほう”が生き残っている。中央から周辺に広がるはずが、中央の中でも部局が違うと伝わっていない。同様に、若年認知症という言葉も部局の壁を超えられない。初老期痴呆を若年認知症(最近報道ではこうだが若年期認知症や若年性認知症とも言う)としたはずなのに、レセプト上の病名に若年性○○○はいろいろあるが、若年性認知症はなく、いまだ初老期認知症である。部局の壁恐るべし。(門雀庵)