環境問題を考える(103)
環境と開発の観点
地球温暖化のせいか今年の夏は連日35℃を超える猛暑が続いた。昨年は熱中症での死者は16人であったが、今年はすでに250人を超えている。ロシアでも猛暑が続き森林火災が発生した。パキスタン、中国、アフリカでは豪雨による洪水の被害が甚大である。
去る5月19日の朝日新聞に、インドネシアのアブラヤシ農園についての記事があった。その記事によると、世界の41%をインドネシアの農園が占める。そして、現在さらにボルネオの奥地で200万ヘクタールにおよぶ世界最大規模のアブラヤシ農園の開発事業の計画があるという。アブラヤシは食用油、マーガリン、洗剤などの原料となる。最近とみに注目されているのは、バイオディーゼルの燃料としてである。アブラヤシは他の植物同様CO2を吸収して成長するので、これから取れたパーム油を自動車の燃料として燃やしたとしても大気中のCO2を増加させないことになる。EUは2020年までに輸送用燃料へのバイオ燃料混合割合を10%に高めることを目標としている。
しかし問題なのは、熱帯林を伐採し、農園を造成しても森林の減少とは見なされない点である。森林の国際的な定義は「樹冠による土地の被覆率が10〜30%以上」となっているという。森林でも熱帯林のジャングルとアブラヤシの農園ではまるっきり違うはずだが。森林が地球環境に提供する生態系への貢献は単にCO2の吸収ばかりではない。生物多様性の保全など極めて多様である。インドネシアばかりでなくブラジルのアマゾンでもジャングルが伐採され、アブラヤシやトウモロコシ畑に変えられている。CO2削減をビジネスの観点だけから考えるのは大きな問題である。
人間の労働の本性は生産によって人間の生活を維持・発展しようとするところにあるが、資本の本性は生産を通して利潤を追求し、その増殖をはかるところにある。CO2削減対策が地球環境にどんな影響を与えるのか深い洞察が必要である。
(環境対策委員・京都府歯科保険医協会副理事長 秋山和雄)