2010診療報酬改定こうみる(7)
耳鼻咽喉科/再診料の減点、標準純音聴力検査の減点は診療所にとって厳しい内容
京都府耳鼻咽喉科専門医会 保険医療委員会委員長 佐藤文彦
今回の中医協委員の中で、診療所を代表した委員は京都府医師会の安達秀樹副会長のみで、再診料、外来管理加算など大変なご苦労があったと思う。まず、このご苦労に対し感謝の意を表したい。その中で、あえて専門医特に診療所の立場から、今回の改定を考えてみたい。まず、主な増・減点項目は以下の通りである。
1、再診料2点の減点。
2、基本診療料乳幼児加算3点の増点
3、標準純音聴力検査、自記オージオメーターによる聴力検査50点の減点
4、標準語音聴力検査、ことばのききとり検査50点の減点
5、嗅裂部・鼻咽腔・副鼻腔入口部ファイバースコピー及び喉頭ファイバースコピー20点の減点
6、細菌培養同定検査及び細菌薬剤感受性検査各々10点の増点
7、内視鏡下嚥下機能検査600点(新設)
今回の改定による増・減点の耳鼻咽喉科診療所に与える影響
日本耳鼻咽喉科学会により、04年から行われている耳鼻咽喉科保険医療実態調査から、診療項目別点数構成比を見ると、再診料が10%強を占めており、これは処置料、検査料に次いで高い構成率である。また、標準純音聴力検査の患者100人当たりの回数は約3回であり、耳鼻咽喉科検査の中でも必須・重要検査である。故に、特に再診料・標準純音聴力検査の減点は耳鼻咽喉科診療所の経営にとって厳しい内容となった。
更に、08年10月の実態調査(475施設)をもとに推計されたデータを見ると、各々増・減点された基本診療料、検査料をレセプト1件当たりで換算すると、まず、診察料は乳幼児初診料が0・37点の増点、一般再診料は2・03点の減点、乳幼児再診料は0・32点の増点で、計1・35点の減点。検査料は標準純音聴力検査、標準語音聴力検査が3・47点の減点、副鼻腔入口部ファイバーなどが0・32点の減点、喉頭ファイバーが0・83点の減点、検査料合計で4・62点の減点。基本診療料、検査料合わせると5・97点の減点となる。
この結果、レセプト1枚の平均点数から換算すると、診療報酬の0・805%が減少することになり、診療報酬額にもよるが、1日午前中だけ3時間、週3回働いているパートの従業員に掛かる費用の分、またはさらにそれ以上減収する施設も出ることになる。
眼科/基本となる検査が引き下げ 開業医に厳しい改定
理事 弓削堅志
今回の改定は一般眼科開業医にとって非常に厳しい内容となった。再診料が下げられただけでなく、屈折検査(74→69点)、矯正視力検査(74→69点)、精密眼圧測定(85→82点)、角膜曲率半径計測(89→84点)といった日常診療の基本となる検査の報酬が、いずれも引き下げられたため、外来診療のみを行う開業医では収入に大きな影響が出ると予想される。
一方、眼筋機能精密検査及び輻輳検査の対象となる検査に、プリズムを用いた遮蔽試験、Hess赤緑試験が追加され、角膜内皮細胞顕微鏡検査の対象に円錐角膜、水庖性角膜症が新たに加えられるなど不合理なものが修正された。また、IOLマスター等の非接触型機器を用いた眼軸長測定に光学的眼軸長(150点)が新設され、黄斑ジストロフィー等の診断に多局所網膜電位図(500点)が認められたことは朗報である。ただ、対象となる疾患の頻度、機器の価格等を考えると、開業医には関係のない話かも知れない。
病院で取り扱う治療においては、加齢黄斑変性症への抗VEGF薬の硝子体内注入に対して、硝子体内注射(580点)がようやく算定できるようになった。また、手術の点数においては、緑内障手術(流出路再建術)が14200点→21300点、網膜復位術が21400点→32100点、増殖性硝子体網膜症手術が38600点→51850点と大幅に増点、その他、涙嚢鼻腔吻合術、眼瞼下垂症手術、斜視手術、眼窩内の手術においても増点するなど、大病院で行われる高度な手術、過小評価されていた手術が正しく評価される結果となった。なお、白内障手術(水晶体再建術)の点数は据え置きとなった。白内障手術は格段の進化を遂げてきたが、決して手技は容易でなく、高額な機器、設備、医療材料を必要とするため、今後、これらを勘案した保険点数の設定を望みたい。
今回の改定は、難易度の高い手術を行う大病院にとっては、点数が引き上げられたことにより嬉しい内容となったが、開業医にとっては汎用される検査の点数が大幅に減ったこともあり歓迎できないものとなった。