集団的個別指導の選定基準 厚生局各科別平均点数を開示
近畿厚生局京都事務所は5月26日、「診療科別平均値一覧表」と「2010年度指導等月別実施予定表」を開示した。これは、京都府保険医協会の開示請求により行われたもの。
このうち、「診療科別平均値一覧表」(表1) は「2010年度集団的個別指導」の対象医療機関選定の基準となる。
集団的個別指導は、レセプト一件当たりの平均点数が高い保険医療機関に対して、地方厚生局が行う行政指導である。各府県における17類型区分ごとに、平均点数の1・2倍(病院は1・1倍)であり、かつ概ね上位8%の保険医療機関を対象に実施される。選定されても即ペナルティーが科せられる訳ではないが、「指導大綱」上は翌年度も高点数保険医療機関に該当した場合は、翌々年度に個別指導の対象になる可能性がある。なお、集団的個別指導または個別指導を受けた保険医療機関は、翌年度及び翌々年度は集団的個別指導の対象から除かれる。
診療所の選定にあたっては11診療科に分けられ、外来レセプトが対象にされる。院外処方を行う医療機関に対しては平均点数が補正される。補正は、各科ごとに一律に表一番右の点数を加算して行われるが、各府県で補正点数は異なる。
2010年度の集団的個別指導は7月の実施が予定されている。対象医療機関(予定段階の数字)は、診療所92機関、病院11機関である。出席案内は開催日の3週間前に送付される。
集団的個別指導は、指導大綱によれば、講習会方式の「集団部分」と、少数のレセプトに基づき20分程度の簡易な面接・懇談方式による「個別部分」の指導を組み合わせて行われることになっている。ただし、「集団部分のみの実施でも良い」とされているため、多くの府県で個別部分は行われておらず、京都でも集団部分(講習会)のみが実施されてきた。
昨年度実施された集団的個別指導の内容を紹介すると、当日、まず近畿厚生局京都事務所の医療指導監視監察官(事務官)から1時間程度、指導大綱・監査要綱、療養担当規則について説明があり、続いて指導医療官(技官)から30分程度、「保険診療の理解のために」と題して医療保険制度、保険診療の基本的ルール、カルテ、傷病名、診療報酬点数に関する留意事項が説明された模様である。
集団的個別指導は、新指導大綱に謳われた「保険診療の質的向上及び適正化」のうち「適正化」=医療費削減に重点を置いて実施されるもので、非常に問題がある。保団連及び京都協会は、集団的個別指導は無意味であり、廃止するよう主張している。
個別指導の増加が懸念
一方、「2010年度指導等月別実施予定表」も開示した(表2) 。恐らく10年3月、近畿厚生局京都事務所で選定委員会が開催され、指導対象医療機関が選定されたと考えられる。
このうち、注目すべきは診療所の個別指導実施予定だ。09年度予定表では25機関(実施数は不明)であったが、10年度はなんと90機関となっている。
ただし、不開示とされ、黒塗りとなっている個別指導の区分について、上段の14機関が「審査支払機関、保険者、患者等からの情報提供」や「再指導」等の理由による選定、下段の76機関が1件当たりの平均点数の高い保険医療機関(集団的個別指導からの移行)ではないかと考えられる(詳細不明)。そう仮定すると、下段は選定されたものの、全て予定通り実施されるとは限らない。
しかし、09年度予定表で黒塗りの上段は7機関であったが、10年度予定表では倍増している。これに加えて、従来、京都では実施されていなかった高点数を理由とした個別指導が実施されることになり、従来に比べ診療所の個別指導の実施件数が増えることは大いに考えられる。
個別指導に当たった時は録音と弁護士帯同を
協会は今後も指導、監査に関する情報収集・提供に努める。また、協会は不正請求を擁護する立場にはなく、不正は正すべきである。一方で、不正のあるなしに関わらず、個別指導において保険医の人権が脅かされてはならないと考えている。そのため、協会は個別指導時の録音と弁護士の帯同を推奨している。
このたび、会員の希望があれば、5万5555円(源泉税含む)+交通費実費の負担で、協会顧問弁護士事務所から弁護士の帯同が可能となった。ぜひ、ご相談いただきたい。