2010診療報酬改定こうみる(6)
産婦人科/診療所は再診料引き下げの影響大 産科再建、勤務医負担軽減につながるか
副理事長 貫戸幸彦
産婦人科の検査・手術に係る新設項目から述べたい。
(1)HPV核酸同定検査が新設された。
(2)乳腺悪性腫瘍手術にセンチネルリンパ節生検(加算)が新設された(要届出)。ただし、触診及び画像診断の結果、腋窩リンパ節への転移が認められない乳がんに係る手術を予定している場合のみ算定する。
(3)帝王切開術の「緊急帝王切開」と「選択帝王切開」が同一の点数(19340点)に引き上げられ、項目に「前置胎盤を合併する場合(21700点)」が新設された。
次に、対象が追加・拡大された項目に触れる。
(1)微生物核酸同定・定量検査におけるクラミジアトラコマチス核酸同定検査の検査方法に核酸ハイブリダイゼーション法、ハイブリッドキャプチャー法が追加された。
(2)ノンストレステストの対象患者が、入院基本料等加算のハイリスク分娩管理加算の対象患者に変更されたが、5月17日付の厚労省事務連絡で、改定前の対象患者と同じとする取扱いに訂正された。従前と取扱いに変更はない。
(3)入院基本料等加算の妊産婦緊急搬送入院加算は、点数が2000点引き上げられるとともに、妊産婦であれば、妊娠以外の入院を必要とする異常で搬送した場合であっても対象とされた。
(4)特定入院料の総合周産期治療室管理料の新生児集中室管理料が1400点引き上げられた。
10年ぶりのプラス改定となったが、医科本体はプラス1・74%、全体で実質0・03%(100億円)程度にとどまり、「崩壊した」と言われる「救急、産科、小児の医療の再建」が実行できるのかが懸念される。また有床診療所を含め、産科・婦人科の再診料引き下げの影響は大きく、診療所には厳しい改定となった。
さらに、診療所から病院への財源移転による「産科勤務医の負担軽減」にも疑問が残る。今回改定が今後、勤務医の待遇に反映されるか検証が必要である。
整形外科/デジタル映像化処理加算の廃止は無床診療所に影響
理事 宇田憲司
整形外科無床診療所の玄関を入ると、領収書に加え今回新たに発行することになった明細書の発行で、受付事務員は忙しそうにばたばた働いている。しかし、その分、診療報酬が上がったとは一向に思えない。また、レセプトオンライン請求に対する補助があるとのことでコンピュータを1台購入して申請したが、誤解で適用外との返事があった。大損とは言わないが、デジタル化・IT化時代に後れぬためには思わぬ出費がかさむ。
今回の改定は、これ以上の医療崩壊を防止すべく、救急・産科・小児科・外科などの医療の再建、病院勤務医の負担軽減を重点課題として、10年ぶりのプラス改定の割には0・19%と現状維持にも覚束ない。
まず、変更されなかったものに、慢性疼痛疾患管理料がある。医療費自己負担の支払い削減のため、月1〜3回の受診抑制者にならばの存在理由がある。
エックス線検査などでは、デジタル映像化処理加算(経過措置)が廃止されたが、電子化管理・保存での点数があり(54〜66点)、アナログ撮影料が下がり、デジタル撮影料が上がり、アナログより8〜10点高くなった。単純エックス線撮影時のデジタル処理加算・電子画像管理加算は無床診療所ではほぼ半数(2008年度社会医療診療行為別調査)で、影響があろう。また、骨塩定量検査をDEXA法で行った場合、大腿骨同時撮影加算が新設され90点が、また、腰椎撮影でも同様に、算定できるようになった。
運動器リハビリテーションでは、従来の1が1(175点:5点増加)と2(165点)に二分された。1は入院施設で従来よりも手厚い人員配置(PT・OT計4人以上)が要件とされ、対象疾患も急性期の運動器疾患や手術後の患者に限定された。従来の2は3(80点)となった。
腰部固定帯加算の名称が、腰部、胸部又は頚部固定帯加算に変更された。
手術では、同一皮切部位での2以上の手術操作に対して非減額・同一所定点数が認められた手術は、従来の骨移植術・植皮術に加え神経移植術が追加された。また、大腿骨頭回転骨切り術・大腿骨近位部(転子間含む)骨切り術と骨盤骨切り術・臼蓋形成手術・寛骨臼移動術を同時に行った場合は点数を合算できる。同一指内(手指、足趾)骨折観血手術・人工関節置換術では、骨・関節毎に合算できる。複数の指(手指、足趾)では、各々の指毎に請求できるようになったもの(『社会保険診療提要』の「指マーク」に留意)と、デブリードマンのようにできないものとがあり、請求時は確認を要する。椎間板摘出術では、2椎間以上摘出する場合、1椎間増すごと4椎間を限度に加算がついた。肩腱板断裂手術(内視鏡下もあり)が新設され、骨盤骨折観血的手術では、創外固定器加算が算定可能となった。