自由詩コーナー/谷口謙 選
女狐(めぎつね)
門林岩雄
金色の目の 女狐が
月に恋をした
月が満ちたり 欠けたりするので
女狐も浮かれたり 沈んだり
馬の国(一)
太った馬やら 痩せた馬
猛る馬やら 沈む馬
馬の国にも 春が来て
あちらこちらで 花が咲く
馬の国(二)
馬の子は馬子(うまこ)
馬子の子が馬々子(ままこ)
馬々子はままごとしてあそぶ
梅
加藤善郎
舟が来ない
待ちつづけて三月もすぎた
波の音も聞き倦きた
舟の幻がときに現われる
ヨットにボート 筏までも
小さいけれど港は港
遠い処で何かがあったんだ
鱶(フカ)がくるりと腹を見せる
手も足も出ない私を
あざ笑っているんだ
星座図鑑(84)ふうちょう座
m.
美しい姿
一瞬
星雲が
過ぎた後
あとかたもなく‥
いや
やはり
美しいと思う
「鳥羽院北面の武士であった西行は二十三歳という若さでなぜ出家遁世したのか。一体どういう宗教家だったのかといった疑問はむかしからあった。『天稟』つまり歌詠みとしての天性の才能が、当時としては最も自由であり得た『法師』を選ばせ、世俗を脱して『花の咲き散るをあわれみ、月の出入を思ふ』『数奇』を生きた。西行、吉野山、桜の歌。吉野山梢の花を見し日より心は身にも添はずなりにき」(河野仁昭)