2010診療報酬改定こうみる(3)/在宅医療

2010診療報酬改定こうみる(3)/在宅医療

在宅医療の推進に逆行する厚労省
同一建物の考え方、在宅療養指導管理料の算定制限など

部員 小川 直

 在宅医療点数の改定の特徴は、(1)往診料の大幅引き上げ、(2)在宅療養支援病院の施設基準の緩和、(3)訪問診療料等への同一建物居住者の考え方の導入、(4)異なる在宅療養指導管理料を複数の医療機関が行う場合の算定制限の導入―の4点に絞られる。

同一建物の考え方は患者個々の訪問診療計画を軽視

 往診料が70点引き上げられ、720点となった。再診料、外来管理加算を加えれば841点となり、訪問診療料を上回るが、往診料は患家の求めに応じて赴く場合に算定する点数であることに注意が必要だ。

 訪問診療料、訪問看護・指導料等が、同一建物居住者の場合200点とそれ以外の場合830点の2つの区分に再編された。これにより、同一日に同一マンション等で複数の患者を診療した場合は200点で算定することになる。逆に、従来の居住系施設でも、1人のみ診療した場合は830点で算定することになる。

 また、「同一患家」の複数の患者を診療した場合は、従前通り、1人目の患者に830点を算定し、2人目以降の患者は初・再診料を算定する。しかし、同一日に同一マンション等の他家の患者を診療した場合、遡って全員200点で算定することになる。

 玄関が異なれば、人々の生活は当然異なる。保険医は個々の患者の様々な療養環境を考慮しながら訪問診療計画を立てているが、それが軽視された。

 在宅ターミナルケア加算について、往診又は訪問診療後24時間以内に在宅以外で死亡した患者にも算定できるようになった点は評価できる。

在宅療養指導管理料の算定制限は医療機関連携を軽視

 在宅自己注射、在宅酸素療法などの在宅療養指導管理料について、支援診療所又は支援病院から患者を紹介された医療機関では、紹介元の診療所又は病院と異なる指導管理を行った場合、紹介月以外、在宅療養指導管理料は算定できないという制限が追加された。

 複数の医療機関が、同一患者に異なる在宅療養指導管理を行っている場合は、それぞれの医療機関で算定していた取扱いが、今回の改定で全面的に否定されたことになる。各々の専門性を発揮しながら、在宅で療養する患者を支え合ってきた医療機関の連携の軽視に他ならない。

支援病院、支援診だけでは在宅医療は支えきれない

 2010年改定は、病院の病床種別による役割分担の推進と、在宅医療への患者の流れが強化された。許可病床数200床未満の中小病院は在宅療養支援病院になることができることになった。再診料も9点引き上げられ、中小病院にも外来・在宅医療を担当させ、入院は急性期からの受け入れと在宅後方支援に特化させようとする意図も見える。

 一方で、在宅医療は、支援病院、支援診だけが受け持てば支え切れるのか。これまで、在宅医療は専門科の異なる多くの開業医の連携により支えられてきた。この連携が上手くいかなくなれば、「安心して在宅医療を受けられない」患者が増えることになる。

 また、在宅医療点数は算定ルールの複雑さから、往々にして解釈誤りにつながりやすい。また、これを不当請求と見なされ、行政指導の対象とされたのでは、たまったものではない。これも開業医が在宅医療に取り組む際の隘路になっている。

 在宅医療の推進のためには、算定制限の緩和、算定ルールの簡素化が必要だが、厚生労働省の改定は、これに逆行していると指摘しておきたい。

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