各地区との懇談すすむ
協会は、2009年度の地区医師会との懇談を進めている。本年度のテーマは「これからの医療制度について」。本号では4地区との懇談のもようを掲載する。
亀岡市・船井医師会と懇談 2月13日 楽々荘
医療崩壊を食い止める提言を
24人が出席して開かれた亀岡市・船井医師会との懇談会
協会は2月13日、亀岡市・船井医師会との懇談会を開催した。地区から18人、協会から6人が出席し、亀岡市医師会・阿部登副会長の司会で進められた。亀岡市医師会・調幸治会長は、「新政権に期待していたが、診療報酬改定は再診料など開業医に対して手厳しい」と述べるとともに「本日はいろいろな情報をお聞かせいただきたい」と挨拶。関理事長の挨拶の後、協会より情報提供を行い、意見交換した。
意見交換では、地区より「医業経営は苦しくなっている。開業医が閉院に追い込まれ、患者が集中した病院では勤務医が過重な勤務を強いられ、日本の医療は崩壊に直面している。こうした状況に対し、協会はデータを出して、医療の実情から改善策を提言してほしい」との意見が出され、協会より、患者のためにも医療崩壊を食い止めねばならず、財源についての議論も踏まえ、提言していきたい旨回答した。
また、後発医薬品について話題となり、地区より「後発医薬品については良い印象を持っていなかった。後発医薬品は出しにくいと思っておられる医師も多いので、普及が進まないのだろう。後発医薬品が先発医薬品と同等なら、安い後発医薬品を使った方が患者のためにもなる」などの意見が出され、協会より「後発医薬品の使用は医療費の削減にも繋がる面もある」と述べる一方で「保険医療養担当規則に追加された後発医薬品使用推進規則に関する努力義務については、医師の処方権を侵害するものとして協会は反対している」と述べた。
さらに、障害者自立支援法について話題となり、地区より「障害者自立支援法によって、共同作業所でわずかの収入を得ている人にも1割の自己負担が課せられる。払うお金もないし、逆に自立できなくなる。障害者自立支援法違憲訴訟は、国との間で基本合意書が締結され、同制度の廃止が約束されたことで終結に向かうこととなったが、今後も社会的弱者が苦しめられるような世の中を変えていかないとだめだ」との意見が出された。これに対して、協会より「日本には社会保障に関する法律が多数あるにもかかわらず、逆に法律があるがために不利益を被る、あるいは法律があってもセーフティネットからこぼれ落ちる人たちがいる。これは法律の不備であり、憲法25条と実定法を結ぶ社会保障基本法が必要だ」と回答した。
その他、診療報酬改定や後期高齢者医療制度など幅広い話題で意見交換した。
懇談の最後に、船井医師会・吉田昭会長は「診療所と病院ともにそれぞれの役割を担い、意欲をもって医療を行えるような制度づくりのために協会は頑張ってほしい」と述べられ、閉会した。
西京医師会と懇談 2月17日 京都エミナース
情報のスリム化について要望
12人が出席して開かれた西京医師会との懇談会
協会は2月17日、西京医師会との懇談会を開催した。地区から7人、協会から5人が出席して、宮地芳樹副会長の司会で進められた。
谷村仲一会長は、「本日は、協会と顔を合わせて話ができる良い機会である。活発な意見交換を行っていきたい」と挨拶した。その後、関理事長の挨拶、協会からの情報提供、意見交換を行った。
地区から、今回の診療報酬改定について、「単科診療所にとっては、大きな改定もなく、再診料の引き下げは痛手である」との意見があり、協会から、「たしかに再診料の引き下げは大きな影響がある。さらに眼科、耳鼻科、皮膚科などでは検査の点数も引き下げられている。一方、専門的かつ最新の手術などに関しては大幅に引き上げられている部分もある」と回答した。新設された地域医療貢献加算に関しては、「時間外や休日に診療所に電話をかけてこられた場合、留守電で携帯電話の番号を案内している。携帯電話で対応した場合は該当するのか」との質問を受け、「該当すると考えられる」と回答した。
また地区から、2カ月に1回発送している「メディパック」をはじめとして、協会の宣伝物や郵送物が多いという指摘があり、「他の団体よりも突出してというわけではないが、地球環境のためにも、ペーパーレスはもちろんのこと、情報のスリム化を切望する」との意見があった。それに対し協会から、「従来から情報のスリム化に取り組んでいるが、まだ多いという印象を受ける方もいるかもしれない。今後もできる限りペーパーレス化、情報のスリム化に努めていきたい」との意向を示し、加えてメディパックについて、その目的を「各担当より随時送付されていた資料やDMを、2カ月に1回のメディパックにパッケージ化して送ることで、送付物の必要性の精査や送料の削減につなげている」と説明した。
また地区から、会員の興味や関心事に合わせて郵送物を選別する案が提起されたが、協会は「大変な労力が必要であり、現段階では難しく、今後の検討課題としたい」と理解を求めた。
その他、医療訴訟に関して、訴訟になった場合の100万円以下で和解する割合について質問があり、協会から、「一度訴訟になれば、弁護士費用などもかさむ。和解額が100万円以下というケースは、勝訴しない限り極めて少ない」と回答した。
山科医師会と懇談 2月18日 山科医師会診療センター
実調報道に対し正しい見解を
14人が出席して開かれた山科医師会との懇談会
協会は2月18日、山科医師会との懇談会を開催。地区から9人、協会から5人が出席し、谷口浩一庶務担当理事の司会で進められた。
服部阿紀彦会長から、日本医師会の会長選が行われるが、過去の日医と自民党の関係には、歯がゆさを感じている会員も多いと思う。政権交代が行われた直後の会長選挙でもあり、日医に対しても新しい変化が求められているのではないだろうか。今日の医療崩壊を招いた原因である官僚任せの医療行政から脱却し、次元の高い医療行政の再現が、保険診療に携わるすべての医師の願いだ。また、協会の活動には多額の資金が動いているが、その活動内容が果たして民意を反映した活動になっているのか。年に1回ぐらいは、一般紙に「日本の医療はこうあるべきだ」といった内容のキャンペーンなど、民意を汲み取れるような活動を展開してほしいと挨拶した。
その後、関理事長の挨拶、協会から情報提供の後、意見交換を行った。
地区からは、今回の診療報酬改定について、居住系施設等訪問診療の見直しとあるが、以前あった居住系に関する算定制限がなくなり、「同一建物に居住する」という漠然としたものに変わっただけで、訪問診療は相変わらず制度としての整合性がない。また算定要件の複雑さは、在宅医療を取り組もうと考えている医療機関の障害となっている面もあり、協会から国に改善を要望してほしい。また、地域医療貢献加算は、算定要件に「休日・夜間に、患者からの問い合わせや受診等に対応可能な体制を確保している場合」とあるが、電話での「問い合わせ」に対応すればいいのか、あるいは医院を開けて患者を実際に診察しなければいけないのか。「問い合わせ」と「受診」の考え方によって対応が大きく変わってくるとの意見が出された。協会からは、診療時間外に対応しない医療機関にとっては厳しい内容となっている。患者からの問い合わせへの対応など詳細な運用については告示・通知が出される3月以降に明らかになると述べた。
さらに、地区からは中医協の医療経済実態調査について、勤務医と開業医の年収比較がたびたび報道されるが、その内容は曲解そのものだ。直接、国会議員に正しい見解を伝えるなど対応を考えて欲しいとの要望が出された。これに対して協会からは、昨年10月30日、中医協医療経済実態調査の結果が公表され、マスコミは「開業医の年収は勤務医の1・7倍」と報道した。「1・7倍」の数字は、個人開業医を含まない法人診療所とその他の診療所の院長の月給を比較したものであり、法人診療所の院長の月給をもって、あたかも開業医すべての月給や年収であるかのように報道するのは正確性に欠けている。今後、民主党をはじめ与党の議員には中医協医療経済実態調査について、適正な調査方法の実施等を含めて要望していきたいと述べた。
また、ある会員より反貧困キャンペーン、憲法九条擁護運動などにつき、協会活動は古いイデオロギーに偏っていないかなどの意見があったが、医療を含む社会保障制度の拡充は患者、国民のみならず、我々医療機関側にも大きく影響するものであり、また、戦争を忌避する思いは、会員の誰しもが共有するものであり、決して旧式のものとは思わない等の意見交換を行った。その他にも、社会保障における財源問題、レセプトオンライン請求義務化問題、新医師会館入居問題について意見交換を行った。