医療安全対策50周年記念シンポ開く

医療安全対策50周年記念シンポ開く

紛争事例を各科ごとに検討

 協会は医療安全対策50周年記念として3月13日、京都市内のホテルで「医事紛争を探る―幾つかの事例検討」医療安全シンポジウムを開催した。シンポジウムには会員や会員医療機関従事者ら124人が参加、4人のパネリストの話題提供を受け、熱心に討論・意見交換した。

 今回は実際に紛争解決に携わる協会担当理事がパネリストとなり、京都で実際に発生した事例を紹介するとともに、各専門科領域に留まらない問題提起をした。パネリストは、外科の林一資理事、整形外科の宇田憲司理事、内科の伊地智俊晴理事、産婦人科の貫戸幸彦副理事長の4氏。

医療安全シンポジウムのもよう
医療安全シンポジウムのもよう

外科

 外科担当の林理事は、協会運営の「医師賠償責任保険処理室会」の紛争対応の流れをあらためて紹介した上で、主に内視鏡の消化器管穿孔事例を報告した。大腸スコープによる偶発症は極めて小さい確率ではあるが、全国的に毎年発生している。中でも穿孔事例が最も多いことをデータで示しながら解説し、京都で実際に発生した内視鏡穿孔事故を数例紹介。患者側・医療機関側双方の主張を述べた後に、紛争事例の中でも、この内視鏡穿孔事例は、手技に問題があるのか不可抗力なのか、過誤の存在の判断が極めて困難である現状を訴えた。過去の判例では、医療機関側が全て敗訴している状況であったが、2005年に医療機関側が二審において逆転勝訴となった例を示し、今後の動向が注目されることを伝えた。

整形外科

 整形外科担当の宇田理事は、典型的な事例として、(1)解決が困難な採血時の神経損傷、(2)関節注射による感染、(3)院内におけるMRSA感染―を紹介した。(1)については、穿刺部位の選択、穿刺方法について注意を促すとともに、無過失補償と賠償の違いについて解説した。(2)で、その注意義務について判例を参考にして、消毒に関する注意を促した。(3)で、院内感染における注意事項を具体的に述べた。

内科

 内科の伊地智理事は、(1)通院を続けていても発見されなかった胃がん、(2)カルテ記載がポイントです!救急時の医療、(3)要注意!類似名の薬剤誤投与、(4)胃瘻、チューブのつもりでIVHチューブに誤接続、(5)宗教上の信念に基づく輸血問題―の事例を取り上げ解説した。これらの事例を通じて、カルテ記載の重要さ、事故後の細やかな患者対応の必要性、医薬品や機器の管理等について、具体的な注意を喚起した。

産婦人科

 産婦人科の貫戸副理事長は、「トイレで破水して脳性小児麻痺」「言い訳ができないガーゼ残存」事例を紹介・解説した。

 さらにシンポジウムの総まとめとして、協会に報告のあった過去5年間の紛争事例の統計を示すとともに、基本概念である「医療事故」「医療過誤」「医事紛争」の意味の違いや、医事紛争に至る背景、医療に関わる法律を解説した。また、協会が経験・開発してきた患者対応の工夫を紹介して、全会員・医療機関に少しでも役立てていただけるように訴えた。

 質疑応答では、各科の医学的・専門的質問から、ヒヤリハット報告の導入方法等、多岐にわたり、活発な討議が行われた。

 なお、シンポジウムの詳細については、後日冊子にまとめ、全会員に発送する予定である。

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