高すぎるワクチンの費用
10歳以上の女性にヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種が話題となっています。ワクチンによる子宮頸がんの予防効果は画期的なことですが、半年間に3回筋注することが推奨されており、自費で一人当たり5万円近くになる勘定です。一部の裕福な成人女性の希望者はおられますが、果たして女子のいる一般家庭の何パーセントが実際に娘の接種を考えるでしょう? 性行為で感染するHPVの疫学を考えると、10代での接種が理想です。子ども手当ても悪くはありませんが、もしも国が本気で子宮頸がん撲滅に取り組むのであれば、助成金を出すなど何らかの援助が必要だと思います。
最近他にも新型インフルエンザワクチンやインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンなどが市場に出ました。また季節性インフルエンザワクチンは毎年予想株が変わります。子育て世代にこれらの複数回の任意接種は、明らかに負担が大きすぎます。さらに兄弟姉妹がいれば、もう何をか言わんやです。また従来ハイリスクの高齢者の肺炎予防に肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されていますが、これも任意であり普及率は伸び悩んでいます。わが国の任意ワクチンにおいては、接種の有無に歴然たる経済的な格差が存在しています。さらにこれらのワクチンの流通本数は需要を考えて潤沢ではありません。ところがマスコミがワクチンの有効性について報道した直後は、決まってワクチンの予約が殺到し、卸に注文してもすぐに入手できない状況が生じています。
種々の感染症対策や疾病予防の切り札として、ワクチン普及の費用対効果は大変優れています。しかし一部でアナフィラキシーなどの副作用を怖がる向きもあります。そういった不安を払拭するためにも、安全性の確立や有害事例への補償を含めた、ワクチン関連事業にもっと予算を投じるべきだと思います。政策によるワクチン普及は、結果として医療費の抑制に貢献すると思います。
(伏見・古家 敬三)