改訂版 医療安全対策の常識と工夫/(11)

改訂版 医療安全対策の常識と工夫/(11)

「誠意を見せろ!」「誠意って何?」

 患者さん側と医療機関側の間に立って、そのやり取りを聞いていると、必ずと言ってよいほど患者さん側は「こんなことになったのは、医者のせいだ。医療の専門家として恥ずかしくないのか? 責任をどう取るつもりだ、誠意を見せろ!」と、矢継早に迫ってきます。それに対する医療機関側の返答も、多くは「『誠意』とはどのような意味で仰っているのでしょうか?」と言った具合です。このやり取りからだけでも「お金の話」をしているのだな、とピンとこられる方も多いことでしょう。確かにご想像通りかも知れません。しかし、ここでちょっと考えていただきたいことがあります。

 患者さんにも色々なタイプの方がおられます。患者さん1人でやって来たり、極端な場合には、俗に言う「示談屋」を院内まで連れて来て、クレームをつける方もいます。何れの場合も、患者さんは医療機関側の「誠意」を求めてやって来るのですが、必ずしも最初から明確な要求がある訳でもないようです。そこで医療機関側としては「『誠意』とは何なのですか?」と聞かざるを得なくなるのですが、「こんな大変なことになっているのに、そんなことも分からないのか?」と、言われるのが常のようです。

 確かに、患者さん側の主張を明確にすることは必要不可欠なことですが、上述したようなことでは一向に話が進みません。

 結論から言うと、患者の意図が「お金」であることが明白であっても、そこをスタートラインとしないことが、後の交渉に重要な影響を与えることになります。

 次回は、医療機関側からの「誠意」についてお話しします。

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