主張/社会保障の充実には応能負担が原則

主張/社会保障の充実には応能負担が原則

 12月25日、鳩山政権による初の2010年度予算案が閣議決定された。民主党マニフェストでは、自公政権の時に重くのしかかっていた社会保障費の伸び2200億円の削減は撤回し、医療費抑制策からの転換を謳い、医師数や医療費の対GDP比をOECD平均まで引き上げる具体的な数値目標を掲げたことは大いに評価できるし、レセプトオンライン請求義務化を実質上撤回されたことも評価できる。しかし、予算を組む段階で財源不足という大きな壁にぶち当たってしまった。10年度の税収は18・9%減の37・4兆円しかなく、国債をぎりぎりの44・3兆円発行し、特別会計から10・6兆円繰り入れて92・3兆円という過去最大の予算を組んだ。

 ガソリン税の暫定税率は実質維持(160円超で減税)、高速道路も限定した形で予算を縮小しながら「コンクリートから人へ」の理念に基づき、公共事業費を抑制し、子育てに手厚く配分した形となった。公共事業費は過去最大の18・3%減で6兆円を割る中で、社会保障費は過去最大の27・3兆円で9・8%の伸びとなり、初めて一般歳出(53・4兆円)の半分を超えた。何と言っても目玉は子ども手当て1・7兆円(中学生以下子ども一人当たり年額31・2万円、初年度は半額)であり、大きな財源がいることから所得制限を設けるべきという意見も多かったが、事務的煩雑さも含め、給付は一律にして高所得の人には所得税の累進性を高めて多く負担してもらう方がいいように思える。高校の実質無償化で文教費も8・2%増えたが、今回の子育てに重点配分したことは画期的と言える。

 診療報酬は、子ども手当のあおりを受けた訳でもないだろうが、0・19%の小幅な引き上げとなった。0・19%と言えば、ほんのわずかのようにも思えるが、自然増もあり、予算上、医療費として4・8%増の9・4兆円を計上している。景気低迷で税収が前年より9兆円も落ち込めば、思うような予算が組めなかったことも少しは同情できる。今後、医療費の総枠拡大を求める場合、財源問題は避けて通れない。医療費の財源負担は、保険料と公費(税金)、窓口負担であり、窓口負担率は国際的に見ても高く、保険料と税に求めるしかない。民主党は無駄削減で財源捻出できるとしていたが、事業仕分けで削減できたのは6770億円にとどまった。今後、一層無駄の根絶に努めてもらうのはもちろんだが、それでも財源不足の場合は、保険料や税の所得に応じた累進的な応能負担を高めてもらう必要があるだろう。

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