社保研レポート/後発品の安全性や効能・効果は進化
第631回(11/21)後発医薬品の安全性と効能・効果における問題点―先発品と後発品の違いの意味は―
講師:京都大学大学院薬学研究科 統合薬学フロンティア教育センター 特任教授 栄田 敏之 氏
連休を利用して東京の息子に会いに行く予定であったが、今回の講演会で出発を遅らせて出席した。私にはどうしても知りたいことがあった。
私は20年前に長い勤務医生活から開業したが、このとき薬品はすべて先発品であった。しかし数年も経たない内にバブルの崩壊と打ち続く医療改定で診療報酬は激減し、200品目の薬品在庫は診療経営の負担となって跳ね返ってきた。ちょうどこんな時に後発品メーカーのプロパーが訪問して来た。先発品に拘ってきた私であったが、これを機会によく処方する50数品目の薬品を一気に後発品に替えた。診療所の存亡を賭けた大変身であった。最も危惧した診療の質は表面上は何も変わらなかったし、患者さんたちの苦情も一切なかった。また診療行為上の支障も今なおない。
栄田教授が語る後発品の安全性と効能・効果における問題点は何なのか。しかし栄田氏の講演からは後発品は先発品とほとんど同等と私には理解された。
私の診療所では後発品に替えた経済効果は著明であったが、講演会の話のように複雑な診療点数から患者さん達にはあまり安くなっていないということがあったかも知れない。今の診療報酬体制では、氏の指摘のように、安くなったという実感は極めて薄いようだ。
講演の中では薬価改定毎に下がる薬価で製造販売が難しくなっていく薬品の寿命に対する大手メーカーの対処は利益の大きい大型薬品を抱えていることによって凌いでいるという。例えばよく使われているワーファリンやセルベックスは製造しても赤字だという。大型薬品の利益で製造奉仕しているという。
私にとって講演のハイライトは後発品の有効成分の純度試験と薬剤製造時の添加物の評価という安全性と効能・効果の問題点の説明であった。後発品のこれらの評価は結論的には概ね合格ということであったように理解された。それは私の十数年の使用経験からも納得できる結論であった。
後発品は粗悪で危険だという偏見は氏らの後発品の安全性に対する研究努力によって、粗悪で危険な薬品は自然淘汰されているということであった。氏らの研究グループの地味ではあるが重要な研究の監視によって、後発品の安全性や効能・効果は進化していることも知った。
私は爽やかな気分で講演会の会場を後に、久しぶりに息子や孫達に会いに京都を発った。
(宇治久世・鈴木将夫)