各地区との懇談すすむ

各地区との懇談すすむ

 協会は、2009年度の地区医師会との懇談を進めている。本年度のテーマは「これからの医療制度について」。本号では4地区との懇談のもようを掲載する。

京都北医師会と懇談 11月11日 京都ブライトンホテル

医療安全対策などで意見交換

15人が出席して開かれた京都北医師会との懇談会
15人が出席して開かれた京都北医師会との懇談会

 協会は11月11日、京都北医師会との懇談会を開催した。懇談は地区から10人、協会から5人が出席し、京都北医師会・加藤賀千雄副会長の司会で進められた。

 冒頭、田代研会長は、民主党の政策について触れ「民主党はマニフェストに基いて政策を進めようとしているが、思うようには進んでいかずに、早くも内閣支持率は低下している。インフルエンザ対策では、専門家の意見をないがしろにする行政のやり方にあきれるばかりであり、レセプトオンライン請求義務化問題では我々の要求に程遠い改正案が出されている。後期高齢者医療制度では廃止先送りに近い答弁を国会でしており、トーンダウンしている」と述べるとともに、「懇談会で、お互いの情報を交換していきたい」と挨拶した。関理事長の挨拶、協会からの情報提供の後、意見交換を行った。

 意見交換では、租税特別措置法26条が話題となった。地区より今後の動向について質問があり、協会より「廃止は毎年、俎上に上がっていたが、現段階で廃止には至っていない。09年7月に協会が行ったアンケートで、租税特別措置法26条を適用している医療機関は3割弱にもなる結果が出た。廃止によって医業を止めざるを得ない医療機関も出てくることも考えられるので、協会は政府に当面の存続を求める要望を出している」と述べた。

 また、京都府「あんしん医療制度構想」に関して、診療報酬決定権限委譲が話題となり、協会より「我々は全国一律単価を守ってきたが、ここにメスを入れようとしている。地域によって診療報酬に差をつけることが言われているが、府北部地区からは住民の収入が減少し、受診抑制も懸念される中で、窓口負担が増えることには賛成できないとの意見も聞く。医師の立場から意見を言っていきたい」と述べた。

 さらに医療安全対策について地区より、「院内で医療安全対策委員会を作っても、自分のところは大丈夫と思っている人もいるので、医事紛争を起こさないという自覚が必要だと思う」との意見が出された。協会より「厳しい労働条件に加えて、医事紛争のリスクが高いがために、産科医や脳外科医等が減少しており、大きな問題となっている。医療界全体でのマンパワー不足を解決しない限り、医療事故を減らす道は開けていかない」と述べるとともに、協会では医療機関での医療安全対策に関する研修会へ講師派遣などの対策を行っていることを紹介した。

 レセプトオンライン請求義務化問題や、後期高齢者医療制度でも活発に意見交換を行い、田代会長の閉会挨拶で懇談会を終えた。

上京東部・西陣医師会と懇談 11月19日 京都ブライトンホテル

特定健診が地域のネットに影響

27人が出席して開かれた上東・西陣医師会との懇談会
27人が出席して開かれた上東・西陣医師会との懇談会

 協会は11月19日、上京東部・西陣医師会との懇談会を開催。懇談は地区から20人、協会から7人が出席し、上京東部医師会・竹上徹理事の司会で進められた。

 冒頭、上京東部医師会・内田秀一会長は、政局について触れ、「新政権になったが、毎日のニュースを見て、何を考えているのかと言いたくなる場面も多々ある」と述べ、「協会から見た新政権の動きなど情報を教えていただきたい」と挨拶。関理事長の挨拶、協会からの情報提供の後、意見交換を行った。

 意見交換では、特定健診問題が話題となった。地区より、「基本健診から特定健診になって、地区医師会の財政面に影響も出たが、それ以上に住民に関わるネットワークに影響が出た。かつては基本健診を軸に、保健所を中心とする地域ネットワークがあり、老人クラブや社会福祉協議会と密接に連絡をとっていたのに、健診が保健所から保険者に実施主体が代わってしまい、それもズタズタになった。地区医師会が主導し、地域の患者さんをしっかり守っていくべきだが、基盤もぜい弱となり、存在意義が問われている。協会は、各地区医師会の存在意義を考えて、地域住民をどう守っていくか提唱してほしい」との要望が出されたほか、「我々や地区医師会が立案して、京都府や京都市に基本健診復活の運動を起こしてはどうか」との意見も出された。

 また、レセプトオンライン請求義務化問題の話題では、「レセプトオンライン訴訟は義務化の歯止めになっているのだろうか」との問いに、協会より「力になっていると思う」と述べるとともに「根本的に国会審議で決めるべきものを政省令で決めることが問題だ」と指摘した。さらに地区より、「これからの地域医療を支える若い世代にも、機器導入等で出費が嵩んでくる。この状況では医療崩壊を止められない。レセプトオンライン請求は完全に手挙げ方式を貫いてほしい」との意見が出された。

 このほか、新政権に対して「我々の意見を無視した政策を打ち出した時には、その度に違うじゃないかと、我々の意見を言ってほしい」との要望も出された。

 懇談会は最後に、西陣医師会・鈴木由一会長の閉会挨拶があり、地区担当事務局を紹介して閉会した。

乙訓医師会と懇談 12月14日 乙訓休日応急診療所

療養病床の再編問題に危機感

16人が出席して開かれた乙訓医師会との懇談会
16人が出席して開かれた乙訓医師会との懇談会

 協会は12月14日、乙訓医師会との懇談会を乙訓休日応急診療所にて開催。懇談は地区から11人、協会から5人が出席し、乙訓医師会・山下元副会長の司会で進められた。

 冒頭、伊与田勲会長は、「政権交代から4カ月。当初は期待と不安が半分ずつであったが、今は不安が増幅している。しかしながら、『後期高齢者医療制度、療養病床廃止の凍結、障害者自立支援法の再建』の3本柱は今後も注視していきたい」と挨拶した。その後、関理事長の挨拶、協会からの情報提供の後、意見交換を行った。

 地区からのテーマである「療養病床の再編問題」が議論の中心となった。病院側からは、医療療養病床は経営的に成り立たない構造になっていると指摘、窮状を明らかにした上で、「多くの病院が救急や急性期病床なども担いながら経営を続けている。今後、療養病床を持つ病院は、医療区分の低い患者だけを残し、医療区分の高い患者を在宅に帰らせるといった、入院患者の選別を迫られることになるだろう。これは病院が本来担うべき姿とは逆の構造である」との意見があった。これに対し協会は、「来年度の診療報酬改定に関する中医協の議論は、外科救急における急性期の問題に集中しており、療養病床や医療区分の問題には及んでいない。また民主党は、後期高齢者医療制度を凍結し、3年間で新たな制度を検討するとして、高齢者医療制度改革会議を発足させた。療養病床の再編問題は、後期高齢者医療制度の在り方を決定した上で議論が展開されるだろう」と述べた。

 一方、在宅医療に関して乙訓医師会が行った調査では、地域全体で在宅患者を受け入れることができる人数は、5年前には200人だったが、今では39人だという。また別の調査では、療養病床における入院患者の選別が行われた場合、在宅に帰らざるをえなくなる患者は80人であると言われている。これらを受け、「医師の高齢化や、本来入院すべき患者が在宅に帰ってきていることによる在宅医療の高度化、多様化などにより、全体として、受け入れることができる人数は減ってきている。在宅を担う開業医はすでに飽和している現状であり、療養病床が廃止されれば、到底すべてを受け入れることはできない。さらに進む高齢化に対し、受け入れ体制をいかに確保していくかが今後の課題である」との認識を示した。これに対し協会は、「協会が昨年実施した、在宅医療に関するアンケートでも同様の意見が多く寄せられた。療養病床再編の問題は、療養病床を持つ病院だけでなく、一般病院や在宅医療を担う開業医など、広範囲に影響する。政権自体を見守るとともに、京都府の動向も目を光らせながら、現場の意見を伝えていかなくてはならない」と述べた。

 その他、レセプトオンライン請求義務化問題について、障害者自立支援法について意見交換を行った。

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