「入院医療」の経営状況に関する緊急アンケート結果

「入院医療」の経営状況に関する緊急アンケート結果

入院医療は赤字、改善は入院基本料等 本体部分の底上げで!

 中央社会保険医療協議会(中医協)において、次回診療報酬改定に向けた議論が活発に行われている。その中で「勤務医の負担軽減」は大きな柱であり、医師や従事者の処遇の向上に関して、診療報酬上、何らかの手立てが加えられることが考えられる。そこで、保険医協会は、入院医療の経営状況を明らかにした上で、どのような手立てが最も有効と、診療担当者側が考えるのか、緊急にアンケート調査を行った。

 対象は、京都府内で入院施設を持つ会員病院及び診療所(321医療機関)。アンケートは2009年12月24日付で送付。10年1月8日までに119医療機関より回答があった(回収率37・1%)。うち、休床等の理由で現在入院医療を取り扱っていない医療機関を除いた有効回答数は103医療機関であった(有効回答率32・1%)。

1、回答医療機関の形態

 回答を寄せた医療機関の形態は、200床以上の病院が27医療機関(23%)、100〜199床の病院が19医療機関(16%)、99床以下の病院が31医療機関(26%)、有床診療所が26医療機関(22%)、休床等入院医療を取り扱っていない医療機関が16医療機関(13%)であった。(図表1)

図表1

2、「入院医療」部分の経営状況

 「入院医療」部分についての経営状況を尋ねた。

 「ほぼ毎月かなりの赤字」と回答したのは27医療機関(27%)。「赤字になることが多い」と回答したのは22医療機関(22%)。「時々赤字になる」と回答したのは16医療機関(16%)であった。これら「赤字になる」と答えた医療機関の総数は、65。実に64%に上った。

 一方「プラスマイナスゼロ程度」との回答は19医療機関(19%)、「ほぼ黒字」との回答は17医療機関(17%)にとどまった。(図表2)

図表2

 「入院医療」が今やいかに不採算な部門に陥っているかが分かる。

3、赤字部分の補てん方法

 次に「入院医療」の赤字部分をどのように経営上補てんしているか尋ねた。

 最も多かった回答が「グループ内の他の施設の黒字分でグループ全体でカバーしている」で22医療機関(34%)。次に「外来の収入でカバーしている」で20医療機関(31%)であった。次に「金融機関からの借り入れでしのいでいる」12療機関(19%)、「自治体からの補助金等でまかなっている」11医療機関(17%)が続いた。(図表3)

図表3

 「入院医療」の赤字をあらゆる部分から補てんし、なんとか全体として運営している実態が分かる。「入院医療」は、他の事業や外来での収入が頼みの綱となっている。借入や補助金等に依存しているということは、いつ「入院医療」が立ち行かなくなるやもしれないことを如実にあらわしている。

4、医師や従事者の処遇改善に有効な点数は

 最後に、医師や従事者の処遇改善を行うにあたって、現行の診療報酬体系のうち、どの部分を上乗せするのが有効と考えるかを尋ねた。

 圧倒的に多かったのは「入院基本料、特定入院料等入院料の本体部分」という回答で、87医療機関(73%)に達し、他を大きく引き離した。

 これ以外には、「初診料、再診料、外来診療料」との回答が18医療機関(15%)、「処置料」が13医療機関(11%)、「手術料」が11医療機関(9%)と続いた。「入院料の加算部分」に至っては、わずか5医療機関(4%)にとどまった。(図表4)

図表4

 処遇改善には、基本診療料のうち、やはり、入院料本体部分の上乗せが不可欠であると考えていることが分かった。入院基本料等加算の上乗せでは、ごく限られた医療機関の医師等の処遇改善にしか役立たないと考えているのではないか。

入院基本料等加算の引上げでは勤務医処遇改善の効果は期待薄

 本アンケートを集約する中、休床中の医療機関からの回答に「(入院医療の赤字を)カバーできないので休床している」との記載がされていた。今回のアンケート結果を象徴している。「入院医療」は赤字である場合が多く、「入院医療」以外の収入で補てんしているのが現状であることが改めてわかった。「入院医療」や勤務医等医師、従事者の処遇改善のためには、初・再診料でなければ、入院基本料等加算でもない、何よりも入院基本料等入院料本体の底上げこそが効果的である、と診療担当者側は考えているというのが、本アンケートの結果である。この結果を踏まえて、中医協においても、勤務医等従事者の処遇改善の方策が議論されることを願う。

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