理事提言/開業医と勤務医の収入格差平準化と次期診療報酬改定について
経営部会 坂本 誠
政府は行政刷新会議により、次年度予算編成に向けて医療でも「事業仕分け」作業を行った。しかし、会議での議論は一方的であり、粗雑で整合性に欠けたもので、医療側と議論を重ねるという姿勢はみられなかった。医療政策に関して民主党が選挙前にマニフェストに掲げた、医療と社会保障を重視し、公的医療制度を保持し改善していくことや、後期高齢者医療制度の見直し、地域医療を充実させて医療崩壊を食い止めるといった、我々の期待したものとは異なる議論が展開されていた。行政刷新会議は「とにかく1円でも削る」という方針であり、保険者側は社会保険が財政破綻状態でお金がないので、まず削減するという考えで、医療側は現状のままでは医療制度・社会保障が崩壊していくといった意見を相互に述べ合うに終始し、前政権から新たな医療制度構築への一歩を踏み出すことはなかったと言える。
削減することに関して出てきたものに、「開業医と勤務医の収入格差の平準化」と「整形外科、眼科、耳鼻科、皮膚科など特定の収入の高い科の診療報酬の見直し」がある。開業医と勤務医の収入格差は、中医協の医療経済実態調査に基づいており、ある月の単価調査で計算されており、賞与や社会保険料(ともに勤務医と開業医で異なる)、年齢差が考慮されておらず、固定資産税なども算定されていない。特に、開業にあたり大きな負担である設備投資金と借入金返済や、設備維持費も考慮されていない。収入格差についてのマスコミの報道(開業医の収入は2700万とか勤務医の1・7倍とか)は、国民に誤解を与えるものであり、不正確な情報で裁断されるのは納得できない。協会は抗議の意味も込めた副理事長談話を発表している。
また、科別の収入差についても、例えば整形外科は、リハビリの器材とそのためのスタッフなどへの特別な支出もあり、科別の収入の特徴が考慮されておらず、不適当な評価と言える。ただ、同一科でも各診療所、地域、年齢による収入格差があることや、病院によって勤務医間でも収入格差の有るのは事実である。診療報酬の改定により、単に開業医の初・再診料を引き下げて病院へシフトさせるのではなく、税の累進性なども視野にいれた議論の余地がなかったのかと考える。
医療の現場を知らずに、平準化のためといって診療報酬を削減すれば、地域から診療所も消えていくであろう。