自由詩コーナー/谷口謙 選
未知
加藤善郎
何も知らないのも良いようだ
小宇宙の周りもその中心も
凡て経験して知りつくした君
花も見たね嵐も見たね
良いことばかりでは無かったよね
それにしても未知は強いよ
言ってもなんの反応も無い未知
未知には負けるよ
欲も希みもあるのか無いのか
やはり未知は強いんだ
星座図鑑(79)みずへび座
m.
暗闇と同じ色で
光る星がある
どうみても星には見えないが
最近の研究でわかった
探査機が到着
データを収集
探査機は帰って行った
星は
悲しかったのだろう
光らなかった
しかし暗闇と同じ色
九月
門林岩雄
芙蓉の雌しべは上を向く
あでやかな花びらに囲まれて
痛み
深手を負って
たおれていると
あざけりながら すぎるもの
わらって石を なげるもの
「それはそれは」と
唐辛子 ぬりにくるやつ……
ことばはいらない
だまって傷口 なめる人
そういう人をこそ
友とよびたい
「ところで私にとってのこだわり、生涯を賭けてきたものは『詩』である。いつまでたっても満足できるものは書けないが、詩を書き続けるためにいくつかの欲望を切り捨ててきた。それは私の美学といえるかもしれない。考えれば、それすら愚かしいことに思えるが、後悔はない」(島田陽子)
定連の3人の方々、永々と無能な私について来て下さいました。今回は特に加藤さんの人生論が勝れているように思いました。
<応募要領>◇字数:原稿用紙1〜1枚半◇未発表のもの。応募作品は返却しません◇住所、氏名、電話番号明記。ただし作品はペンネームで結構です◇送り先:協会保険医新聞担当◇毎月20日締切◇第1席入選者には図書カード贈呈◇作品の発表にあたり選者が添削する場合があります。あらかじめご了承下さい。