府内の医療はいま 山城北地区医師会にきく

府内の医療はいま 山城北地区医師会にきく

 山城北医療圏は京都市に隣接し、宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、久御山町、井手町、宇治田原町の4市3町で構成される医療圏である。そのうち、宇治市・城陽市・久御山町は宇治久世医師会であり、他は綴喜医師会が対応する地域である。したがって、協会による聞き取り調査は、両医師会共、複数の先生方にお願いし、応じていただくことができた。聞き取りの概要について、以下に紹介する。

山城北地区医師会

宇治久世 救急医療への手厚い報酬と周産期医療の人材確保を

 宇治久世医師会は、地域に病院や診療所が多く、京都市にも隣接していることから、府内では比較的医療提供体制は充実していると言える。しかし、小児を含む救急医療や周産期医療は課題も多い。課題の解決に必要な事項を伺った。

 救急医療は、夜間・休日の受入体制が欠かせないが、全医療機関が一様に人的・設備投資をするのではなく、現在の各病院の機能を生かし、地域全体での連携が必要である。医療機関が限られる地方では、集中化と患者搬送システムを考えるべき。“満床”が救急受け入れのハードルとなることも多く、人命を優先するならば、1〜2人の超過入院は調節範囲として認めるべきではないか。

 救急患者には重症度、介護度、社会性に程度や違いがあり、これらの諸条件を考慮して、より条件の悪い患者を受け入れた病院を評価して支援することも必要である。また、現在のDPC制度の改善や、救急医療に携わる医師の待遇改善を求めたい。

 小児救急は、主に宇治徳洲会病院、宇治武田病院、医仁会武田総合病院(伏見区)に担ってもらっているが、救急受診の不要な軽症患者も多く、業務過重につながっている。小児の救急疾患は、外科的疾患も含めて数は少ない。高度な専門技術を持つ病院を集約化して、そこで集中的に診る。そのためには、一次医療は地域の開業医や小児科以外の医師の協力が不可欠となる。加えて、受診する親の教育、宣伝、体制づくりも必要である。

 周産期医療は、早産・妊娠高血圧症候群などの合併症妊婦の母体搬送や、異常新生児を転送する時に、(1)京都府周産期医療情報システムを利用しても転送先の決定にかなりの時間を要する。(2)転送先が非常に遠方になる―問題がある。これは、NICU(新生児集中治療室)、PICU(小児集中治療室)及びその後方収容を行う病床数不足と、マンパワー不足が要因と考える。今後は二次医療圏に1カ所、十分なマンパワーを有するNICU、PICUを併設する医療機関を設置して欲しい。

 地域では、産婦人科の常勤医不足で分娩を中止した病院もあるほか、助産師が大病院に集中し、一般病院や開業医は助産師不足に陥っている。このため城陽市では、分娩医療機関がなくなり、隣接する伏見区では、多くの開業医が分娩の取扱いを中止している。喫緊の課題は、特定の分娩医療機関への受診偏在、産婦人科医不足の解消に加え、助産師確保である。

綴喜 連携は医師各個人の努力 基幹的役割を担う病院が必要

 綴喜医師会地域は、山城北医療圏南部に位置する。同じ綴喜医師会地域の中でも、国道24号線や近鉄・JR線沿線の京田辺市周辺と、国道1号線や京阪線沿線の八幡市とでは、患者の流れが異なると考えられる。今回は主に京田辺市周辺の状況について、ごく簡単ではあるが紹介する。

 京田辺市を中心とする地域には、あらゆる診療科に対応可能な地域の基幹病院的役割を担う病院が存在しない。小児科領域に関しては、市内に紹介を積極的に受け入れる病院があり、一定地域内で診療を完結することが可能なようである。しかし、その他の領域となると、地域内だけでなく、宇治市や城陽市、さらには京都市内の公的病院にまで患者の受診地域が広がっているのが現状だ。

 脳卒中であれば、t-PA静注療法のできる○○病院、「急性心筋梗塞」なら循環器専門医が24時間診療応需体制をとっている○○病院、というように、開業医による紹介先や、患者が希望する紹介先も、地域内の病院とは限らないようで、連携は医師各個人のつながりに頼っているのが現状といえよう。

 基幹病院的役割の病院が存在しないことに加えて、回復期リハビリテーション病棟を持つ病院が存在しないことなど、例えば脳卒中の地域連携パスを地域内で組み立てるというよりも以前に、まずは逆紹介を含む病診連携を形作ることが必要とされているようである。そのためには病院が、経営的にも入院医療に専念できるような診療報酬体系が構築されるなど、診療報酬の底上げが必要であると考えられる。

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