社保研レポート 在宅での経腸栄養管理の実際を解説
第629回(7/16)在宅医療における栄養管理について
―栄養アセスメントと経腸栄養管理の実際―
講師:滋賀医科大学附属病院栄養治療部病院教授 佐々木雅也 氏
在宅医療シリーズ第5回として、第629回社会保険研究会を開催。講師を滋賀医科大学附属病院栄養治療部病院教授の佐々木雅也氏にお願いし、「在宅医療における栄養管理について―栄養アセスメントと経腸栄養管理の実際―」について解説いただいた。
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昨今、食べられない、飲み込めないとなると胃瘻造設にて在宅に帰れるようになり、在宅でも胃瘻の患者さんの数が増加の一途である。
それはさておき、適正な管理が重要であることを痛感しており、このたびの研究会があることを知り、参加した。
1、栄養アセスメント
栄養障害を正しく評価することが栄養管理の上で重要であり、実症例にて評価法による違いの説明がされた。
滋賀医科大学附属病院におけるNST(Nutrition Support Team)の活動が紹介された。医師、歯科医師、看護師、管理栄養士などで構成され、対象患者は内科のみならず広い科にわたり依頼があるということである。現在は全国1200施設以上でNSTチームがある。
2、在宅経腸栄養管理の実際
・投与カロリーについてはエネルギー不足とともに、過剰にも注意することが重要で、BEE(Basal Energy Expenditure)に活動係数を乗じて算出したエネルギーでは過剰になるとのことであった。
・栄養補給方法として消化管を使うという考え方が普及、PEGにより長期管理が可能となった。
・経鼻チューブを使うときは12Fr以下の細いチューブを使うようにしてびらんや潰瘍を予防する必要がある。
・経腸栄養剤について
人工濃厚流動食と自然食品流動食があるが、現在市販されている経腸栄養剤のほとんどは人工濃厚流動食である。
人工濃厚流動食は成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤に分類され、市販されている栄養剤は150種類以上あるものの、医薬品扱いは9種類のみ、その他は食品扱いで病態別経腸栄養剤(糖尿病、腎不全用など)の多くは食品扱いということであった。消化管に異常のない場合は半消化態栄養剤が第一選択とすべきである。
保険適応についてのお話もあり、参考になった。
経腸栄養法の合併症については、下痢などの消化器合併症、細菌感染などへの対処が重要。
正しい管理によってほとんどの合併症は予防できるとのことだが、それでも起こるトラブルの実例等、その対処、経過などのお話も聞いてみたいものです。
(中京西部・宮岡和子)