社会保障基本法で政治を変えよう 東京でシンポ
25条の実現を訴える
「貧困をなくし、社会保障を守る『基本法』を考えるシンポジウム」が9月27日、東京・新宿のあいおい損保新宿ホールで開かれた。これは京都府保険医協会が開催呼びかけ団体となり、作家の落合恵子氏らが呼びかけ人となって首都圏の多数の団体が協力して実現した。588人が会場を埋め尽くし、憲法25条の強化、具体策としての社会保障基本法の制定について、熱い討論が行われた。
湯浅・後藤・渡辺氏によるコラボ対談のもよう
現場からの告発
第1部のシンポジウム「現場からの告発―なぜ政治・法律の変革をめざすのか」では、首都圏青年ユニオン書記長の河添誠氏が、昨年のサブプライム危機以降、派遣切りが大量に発生している。社会保障の拡充には安定した雇用が前提だ、と訴えた。
次いで、埼玉県済生会栗橋病院副院長の本田宏氏が、現在の医師不足は医療費削減が原因だ。今こそ公的資金を使った医療費拡大が必要であり、医療の拡充で雇用も増やそうと述べた。
すこやか福祉会理事長の竹森チヤ子氏は、24時間、365日を目指して在宅ケアを進めているが、介護限度額の制限によって訪問回数が減り、「在宅」が不可能になってきていると述べた。
労働者福祉中央協議会会長の笹森清氏は、元連合会長と自己紹介した上で、立場の違う力の合成が、大きな力を生むことを、後期高齢者医療制度廃止運動で実感したと述べた。
弁護士の竹下義樹氏は、生活保護裁判を10年以上闘い続け、高い勝訴率であるにもかかわらず、現実は何も変わっていない。裁判で闘うこと自体は大切だが、そこまでしなくてもきちんと保障される社会保障を作るためには、どうしても社会保障基本法が必要だ、と訴えた。
本格的福祉国家への道
第2部の対談「本格的福祉国家への道」では、自立生活サポートセンターもやい事務局長の湯浅誠氏が、政権が変わっても状況は、そう大きく変わる訳ではないが、どこまで変えられるかの射程は、多少伸びた。当面の課題は、この射程をどこまで伸ばすかだと述べた。
都留文科大学教授の後藤道夫氏は、日本が目指すべきは福祉国家であり、その社会の見取り図は、雇用期限を切られた形ではないフルタイム労働を基本とし、医療や教育など誰にでも必要な普遍的な社会サービスについては、利用料をとらず、すべての人に最低生活保障型の社会保障が行われるという形ではないか、と述べた。
一橋大学教授の渡辺治氏は、国家に「武器を持って他国で戦ってはいけない」という禁止事項を定めた9条に対して、25条は「生存権保障のためには、こういうことをしなさい」という具体的内容を強制する規定になっている。従って、運動にも「やらせない運動」とは違うレベルと内容が求められ、国を強制するための法律が必要になってくる。その点で社会保障基本法という形は、各分野に起こっている問題を横につないで最低限確保すべき内容をまとめ、保障させる仕掛けとして有効だ、と述べた。
最後に、「憲法25条の実現を求めるアピール」を参加者全員で採択して閉会した。(当日のもようはホームページで動画配信中、抄録を来月発行予定)
竹下義樹氏 |
笹森 清氏 |
竹森チヤ子氏 |
本田 宏氏 |
河添 誠氏 |
湯浅 誠氏 |
後藤道夫氏 |
渡辺 治氏 |