憲法を考えるために(25)「政権交代」
政権交代をもたらした総選挙は、憲法を取り巻く状況にも変化を起こしたと思われる。まず新憲法制定議員連盟(改憲派)の議員が多数落選した(139人から53人に減少)。当選者のアンケート調査では、改憲派は59%(朝日)・64%(共同)・68%(毎日)で、「朝日」によれば4年前に比べ、積極的改憲派は半減し、改憲派は改憲発議に必要な2/3を下回ったとしている。また「毎日」によれば、9条改憲賛成は34%。
次に民主党では、改憲賛成は46%(朝日)・56%(共同)で、「朝日」によれば、賛成16%(4年前50%)・どちらかといえば賛成30%。「共同」によれば、9条以外の部分的改憲35%・9条を含めた部分的改正13%・全面的改正8%(9条改憲賛成21%)。
いずれをとっても、改憲から護憲への傾向がうかがえる。
次に民主党の憲法に対する方針であるが、そのマニフェストでは、2005年の民主党憲法提言をもとに、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を大切にしながら、「自由闊達な憲法議論を行い、国民の多くの皆さんが改正を求め、かつ、国会内の広汎且つ円満な合意形成できる事項があるかどうか、慎重かつ積極的に検討していきます」と書かれている。一言でいうなら、議論をしましょうにとどまっている。そして民主党成立の経過から見ても憲法に対するスタンスは、政権党になった今も、統一的ではなくバラバラといわざるを得ないように思える。
そして今、憲法を巡る状況は考えるべき問題がさまざまある。まず、来春に施行される予定の憲法改正手続法(国民投票法)は、最低投票率の規定がない、憲法にかかわる運動が規制されるなど多くの問題を含んでいる(憲法を考えるために(2)(3)を参照されたい)。
また、「安全保障と防衛力に関する懇談会報告」をもとにしているといわれる「防衛大綱改定」も専守防衛の見直し、集団的自衛権の容認、敵基地攻撃能力の検討など、憲法の実質的な改正につながる問題を含んでいる(同(4)を参照されたい)。
さらにインド洋海上自衛隊給油活動、海賊対処法の問題も忘れてはならないだろう(同23を参照されたい)。
憲法と、そしてこれらの憲法を巡る諸問題への民主党の方針・政策を注意深く見守る必要があるだろう。
(政策部会理事・飯田哲夫)