ひと/「漂萍の記」を連載中 谷口謙さん(北丹)
「これは私の遺言と思って下さい」。本紙連載中の「続々漂萍の記」はスタートから3カ月、すでに最終回まで執筆を終えている。「漂萍の記―小さな自伝」が始まったのは24年前(85年4月)。北丹地域での医療の厳しさを描いて、読んで励まされたという読者の声も多い。20年ぶりの連載再開を打診され、いったんは断るも、思い直したのは「青春はいかに貴重か」という思い。
本紙では「自由詩コーナー」の選者を91年9月から受け持つ、日本詩人クラブ会員でもある詩人だ。詩集は最近刊の『惨禍』まで20冊を数える。桑原武夫の「第二芸術論」に衝撃を受けて詩を書き始めて六十余年。ある程度認められるには中央に出ないといけないが、「この地において、全くの無名詩人で終わることに悔いはありません」と振り返る。
俳人与謝蕪村の研究家としても知られる。『蕪村の丹後時代』など、著作も6冊ある。
04年4月の合併で京丹後市となる2週間前、地域医療への貢献により旧大宮町の最初で最後の名誉町民となった。「無位無冠できましたが、故吉岡町長の好意で、最後の置き土産をいただきました」
大正14年5月生まれの84歳。診療所は1年前から休診しているが、警察医や産業医などを務めながら、健筆をふるう。今後は花を主題に「健気に生きている、心の慰みを詩にしたい」と語る笑顔はどこまでも優しい。