シリーズ環境問題を考える(94)もんじゅ菩薩を辱めないために

シリーズ環境問題を考える(94)もんじゅ菩薩を辱めないために

環境対策担当理事 飯田 哲夫

 知恵をその徳とするという菩薩の名を持つ高速増殖炉「もんじゅ」の稼働が、大事故から14年を経て、再び予定されている。

 事故後に行われた改良工事は、(1)ナトリウム漏れの原因となった温度計さやの取替え、(2)ナトリウム漏洩時対策、(3)蒸気発生器対策などであったといわれる。

 しかし専門家からは、これら主としてナトリウムにかかわる対策も確実であるとはいえず、また「もんじゅ」の本質的な危険といわれる暴走事故や、配管設置(上部引き回し構造)の耐震性の弱さ、さらに、10年余の時間が引き起こすナトリウムの劣化、機器や配管の劣化、そして新たに判明した活断層など耐震安全性の問題などが指摘されている。

 具体的には「もんじゅ監視委員会(原子力発電に反対する福井県民会議)」が提示した、(1)2次冷却系配管および機器の健全性、(2)蒸気発生器伝熱管の健全性、(3)熱疲労による機器や配管の健全性、(4)ナトリウム抜き取り系の熱衝撃問題、(5)燃料の健全性、(6)燃料組成の劣化、(7)コンクリートの健全性、(8)地震の問題、(9)組織風土、安全文化への取り組みのいずれに対しても、運転再開の安全性が保証されているとは言い難いのが現状であり、さらに(10)「もんじゅ」の必要性自体が問われている。

 高速増殖炉はいまだに実用化の目処すらたたず、すでにアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスが開発から撤退している。(ロシアの高速炉は増殖炉でないく、インドは核兵器製造用、中国は実験炉)

 さらに現在予想されている実証炉は、「もんじゅ」と大きく異なり、「もんじゅ」はもはや原型炉ではなく、高速増殖炉開発の中での位置づけすらもなくなったといわれている。

 それにもかかわらず、高速増殖炉開発に累積2兆円以上、「もんじゅ」改造工事関連で340億円、「もんじゅ」稼働に年間200億円(停止中ですら年間100億円)が、注ぎ込まれている。これはアメリカの次世代原子炉開発費用年間30億円、GNEP(国際原子力パートナーシップ)の年間180億円などとかけ離れているが、この巨額の金は何処に流れて行ったのであろうか。

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