「社会保障基本法」の法制化は、なぜ大切なのか/大谷實・学校法人同志社総長

「社会保障基本法」の法制化は、なぜ大切なのか

大谷實・学校法人同志社総長

注目すべきは13条「幸福追求権」重視

 私がこの「社会保障基本法」が大切だと思っているのは、これまでは社会保障というと、生活を扶助するものと見られてきたのですけれど、そうではなくて、やはり人間らしい生き方というものが大切だと思うのです。言い換えると、どうすれば穏やかな気分で生活できるか、ということが私の一番の関心事です。いかに毎日ハッピーでいられるか、そういう状態を作りあげていくことが、社会保障の一番大切なことだと思っています。従来は生きていくこと、生活のための最低の保障をするというのが社会保障のように考えられがちでした。言い換えると憲法25条の生存権を中心に考えてきたのですけれども、大切なのはむしろ憲法13条のいわゆる「幸福追求権」であると思っていまして、それをどう実現していくかということが、私が「社会保障基本法」に、深い関心を持っている所以です。

人間らしい生き方ができる社会に

 今、現実に大きな問題となっているのは自殺です。ここ数年間、3万人以上の人が自殺で亡くなっています。いろんな原因があると思うのですけれど、やはり人間らしい生き方ができない状態に追い込まれている人が、非常に多いからだと思うのです。

 従って最近、自殺対策基本法という法律ができましたけれども、むしろそれ以前に、社会保障をもう少しきちっとしていけば、自殺問題の大半が解消されていくと思っています。

 「社会保障基本法案」の中身で、これまでと発想が違うのは、先程言いました憲法13条を基礎として、その上で25条の生存権、あるいは生活権を謳っているということが非常に斬新で、今後大きな意味を持ってくるだろうと思っています。(08年4月)

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