憲法を考えるために(23)「海賊」

憲法を考えるために(23)「海賊」

 9条「……、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。

 「国際紛争を解決する」を自然に解釈すれば、それには解決に当たって当然「国益を守る」が含まれるであろう。言葉をかえれば、国益を守るためといえども、そのために武力を行使しない(平和的手段で解決する)ことを意味する。そしてこれは20世紀までのおびただしい戦争や紛争の悲惨さへの、現実的な反省から生まれ、私たちは世界に対し60年余、これを守り通してきた。

 一方、首相は国会において、ソマリア沖における海賊に対処することは「日本の国益を脅かす死活的な問題」と述べているが、これは日本の国益を守るを意味することに疑問の余地はないであろう。

 さらに今回の海賊対処法は、武器使用は正当防衛と緊急避難に限るのではなく、自衛隊の海外派遣ではじめて、正当防衛や緊急避難に該当しない場合、あるいは相手が攻撃していない段階での(先制的な)武器の使用を認めている。

 どう考えても違憲に該当すると思える。

 これに対し政府見解は、国際紛争は国家あるいはそれに準ずる組織間の紛争であるから、今回は国際紛争でないという(この場合の国際紛争は明らかに戦争を指し、それに対して憲法は同じ9条で、戦争の永久放棄を規定し、それとともに最初に述べた規定をしていることに注目すべきである)。また武器の使用と武力の行使を異なるものという。

 詭弁ではないだろうか。

 では、日本は自国民の安全にかかわる問題を無視して良いのか、国際貢献をしなくて良いのか。そんなことはない。国連海洋法条約は、海賊対処に当たる国の公海上の管理権=警察権を認めている。すなわち警察行動(沿岸警備、海上保安)であり、軍隊と警察は全く別のものである。そしてこれに関して日本は、マラッカ海峡において(海賊問題を含め)アジアの主役を務める実績を持っているのである。

 なぜアフリカでは自衛隊なのか。

 最後になるが、国際貢献について。ソマリアではなぜ海賊が横行するのか、その根本的な原因は何か。冷戦時代にエチオピアとの(米ソ代理)戦争を戦ったソマリア軍事政権が崩壊、国連平和維持軍(米軍主体)の介入失敗以来、貧しく、無政府状態でありながら、世界から見放された状態であり、それが海へあふれ出してきているのではないだろうか。国際貢献の方向はそこにこそあると思われる。

(政策部会理事・飯田哲夫)

 ※本連載は2号おきに掲載しています。6月の「読者のひっち俳句」は15日号、「自由詩コーナー」は22日号に掲載します。

ページの先頭へ