レセプトのオンライン請求Q&A(20)レセプトのオンライン請求義務化と社会保障カード
Q、前回(第19回)に社会保障カードの問題が書かれていましたが、オンライン請求義務化との関係をもう少し教えて下さい。
A、政府は、社会保障カードについて、?オンラインで自分のレセプト情報を閲覧できる、?医療機関でオンラインで資格確認することで被保険者証として使える―という2点を、国民に対してメリットとして謳っています。この2点は、レセプトのオンライン請求義務化を前提としています。
この社会保障カード構想は、図のように、パソコン、携帯電話、地上デジタル放送対応テレビを使って、全国民が電子行政サービスを活用したり、電子私書箱を持つという構想とともに、国家的IT戦略の中に一体的に組み込まれています。
一方で、本紙1面「主張」でも指摘している通り、社会保障カードの導入は「国民総背番号」ともいえる社会保障番号の全国民への付番や、医療・介護・年金の情報を全てリンクさせて、社会保障に対する個人単位の負担と給付を管理する「社会保障個人会計」の導入の布石とも考えられます。
国がITを利用して行政サービスの改革や社会保障の構造改革に取り組むことについては、将来に禍根を残さぬよう慎重に検証していく必要があります。ただし、どのような国家戦略があろうともオンライン請求の義務化は、我々保険医が担当する「療養の給付」の質的向上に直接関わるものではなく、また給付制限や包括化の拡大につながる意向が垣間見える以上、請求の一方法を超えて国家戦略に位置づけられることは問題です。
我々保険医が、レセプトのオンライン請求義務化を単に請求方法の押し付けとだけ考えて反対しているのではなく、「社会保障構造改革」のカギと認識して問題視していることを、国民に伝えていく必要があると考えています。(おわり)