読者のひっち俳句 隆英 選
入選 つつまれて八坂の塔は花の中 善郎
佳作 三代の揃いし宴<ルビ/うたげ>花の宵 善郎
山里の朽ちたる橋や春の水 絢子
どの花にも己を合わせ霞草 絢子
あたたかくものみな呆け霞みけり 青磁
ケーキ焼く香の流れくる初つばめ 珠子
病窓をついと過<ルビ/よぎ>りぬ初燕 珠子
高だかと辛夷咲きけり宮詣 珠子
冴ゆる夜や深夜飛行の音空に 素
高瀬川に沿ひあるきけり花筏 素
(順不同、仮名づかい新旧自由)
短 評
善郎さん、テレビでの京都といえば、まず八坂の塔を見下ろす景が出ます。あの場所をはっきり知らないのですが、一度ゆっくり眺めてみたいです。おそらく満開の桜に囲まれて素晴らしいのでしょう。親、子、孫と三代揃っての花のうたげは最高です。
絢子さん、薔薇ですと必ず霞草があしらわれ、花がひきたちます。本当に「己を合わせ」、ぴったりの表現です。
青磁さん、春のムードがよく出ています。
珠子さん、ケーキを焼くという明るく楽しい朝に初燕がとんできた。初燕という季語が生きています。
素さん、高瀬川の夜は照明で花がとても美しいです。花筏の離合集散いそがしいことでしょう。
選者吟 転校の子の手を引いて花の門 隆英