自由詩コーナー 谷口 謙 選
星座図鑑(73)みなみのさんかく座 m.
私がこれだけ頑張っていることを
どのくらいの人が知っているだろうか
そんなことは関係ないと
自分に言い聞かせても
何か納得できないものがある
と
思いめぐらせながら
さあ日も落ちた
光を放て
橋 加藤善郎
橋が架っていた
あの島に架っていた
久しぶりに来たこの町
苦労して架けたんだと
長い歳月が経ったんだと
待望の橋だったんだ
しかし待ち切れずに
去った多くの人々
世代交代したほどの歳月
そして今波間に映るまま
数えられる少い往来
記念碑は立派に出来てはいたが
冬の風景 門林岩雄
雲がゆき
鳥がゆき
人がゆく……
けれどおまえは 動かない
大きな川の 堤防の下
そこに根づいた プラタナス―
それからおまえは 生きぬき耐えぬき
ついにこのような
見上げる大樹
山の春
山の大きな岩の上で
お月さま交え
カルタ取り
鹿もいる 猿もいる 雉もいる
風はいれては もらえない
それで ときおり
カルタが吹っ飛ぶ
電話
最近外孫は
「バアチャン」
と言えるようになった
それでやたらと電話してくる
今日の留守録の声は
かすれてよわよわしい
どうしたんだろう?
「自然を理解することは、最も美しいやはらぎを人間に残す。そして誰でもが、その自然の意義に味到する時、更に人間として正確な理解を人生に有する様になる」(福田正夫 土の魂)
古い民衆派詩人の言葉です。「焰」誌八十一号より引用しました。この詩誌を発行しておいでなのは娘さんの福田美鈴さんです。古い昔ですが、詩人 能登秀夫との席で一度だけお会いしました。いい言葉です。
<応募要領>◇字数:原稿用紙1〜1枚半◇未発表のもの。応募作品は返却しません◇住所、氏名、電話番号明記。ただし作品はペンネームで結構です◇送り先:協会保険医新聞担当◇毎月20日締切◇第1席入選者には図書カード贈呈◇作品の発表にあたり選者が添添削する場合があります。あらかじめご了承下さい。