日本ローカル鉄道の旅 その6(またまた特別篇)
京都から八戸まで 北小路 博央(北)
東北横断・三陸リアス北上鈍行の旅(3)
米沢発山形行は1435kmを走るが車体は在来線のまま
第2日 新潟―(坂町)―米沢―山形―仙台―石巻―女川 308km
ローカル線で渓谷の紅葉を堪能
8時39分新潟発米沢行快速「べにはな」は、駅やホームが通勤通学客で大混雑のわりには程々の混みよう、坂町で乗り換えなしに米沢まで直行するのは有り難い。坂町を出て荒川が見える辺りから対岸の紅葉に目を奪われる。越後下関―片貝間では陽光に映えてまさに錦繍そのもの、渓谷米坂線(坂町―米沢90・7kmの面目躍如であった。初乗りローカル線の印象が良かったことが嬉しい。
米沢で山形行鈍行に乗り換える。福島―米沢―山形間は元来奥羽本線であったが、1992年山形ミニ新幹線が走るようになって1435mmゲージになり(その後、新庄まで延長)、ここを走る在来線鈍行もこのゲージの上を走ることになった(ゲージは変わるが車体は前のまま)。米沢で乗り換えた山形行鈍行は広軌の上を走っているからかどうか90〜100kmで突っ走る。窓から見て対向線のレール幅がヤケに広く見える。前に私は「ミニ新幹線の線路を使う在来線は股を広げてヨタヨタ走らねばならない…」と書いたことがあるが、乗ってみて訂正しなければならないことが分かった。
米沢で名物駅弁「牛肉どまんなか」が配られる。“米沢牛をふんだんに使った逸品”と宣伝されているもので楽しみにしていたが、これは辛くていささか期待外れ…。上ノ山温泉あたりから下校高校生が乗り込んで来て超満員となる。
山形駅で仙山線(山形―仙台63km仙台行快速への乗り換え時間は9分、広い駅の中の跨線橋越えは少々忙しい。仙山線も山間線で山寺、作並など景勝の地を通るが、曇りでしぐれ、窓外の眺めはイマイチの中に仙台着。
仙台から石巻に至る仙石線(50km)は、仙台駅ホームを延々と歩いた先の地下ホームから出る。この線はあおば通駅から地下鉄の形で仙台を経て苦竹まで地下を走り、別名をマンガッタンラインと称する。地下をマンガッタン、マンガッタンと走るからか、と思ったがさにあらず、石巻出身のマンガ家、石森章太郎氏の記念館「漫画館」にちなんだネーミングだそうな。JRはローカル線にカタカナの愛称をつけるのがお好きなようで…。
石巻まではロングシートの1時間、松島海岸をチラホラ見ながら石巻で石巻線女川行鈍行(石巻―女川17km)に乗り換える頃には、夕陽の美しい快晴となる。山間部と海岸線では天候の変化が目まぐるしい東北を、日本海沿岸坂町から259kmの横断を終えて太平洋側さんま漁港で有名な終着女川駅に到着。迎えのバスで田舎風温泉旅館にチェックイン。怖いような階段の古びた木造旅館だが、夕食には鯨の刺身など思わぬ珍味が盛沢山の上、地酒もうまくて、御一行10人は添乗さんを含めてすっかり盛り上がった。(続)
※仙台から石巻までの仙石線を本文中で「マンガッタンラインと称する。」と記載していますが、石ノ森作品をラッピングされた車両が「マンガッタンライナー」と命名されているのみで、仙石線を「マンガッタンライン」とは呼んでいません。また、石ノ森氏は石巻出身ではなく、宮城県登米郡中田町石森(当時)の出身です。本文中にある「仙台を経て苦竹まで地下を走り」とありますが、地下は苦竹駅一つ手前の陸前原ノ町駅までで、苦竹は高架駅です。以上、訂正させていただきます。(2020.8.5追記)